変わらない記憶Ⅲ

盛田 紗央

担当教員によるコメント

盛田紗央さんの「変わらない記憶Ⅲ」は4点組の1作品である。自己の創作に向き合い始めた時、彼女が着眼したものは、長く過ごしたアメリカの風景だった。記憶に残る広陵した景色は、彼女にとっての心の原風景なのだろう。4点組の大きな作品は、慣れ親しんだ風景が時代と共に変遷していく様子を描いている。ディープエッチングとアクアチントを組み合わせて作られたモノクロームの世界は、腐蝕を繰り返し削り出し作りあげたものである。真摯に自己と向き合い、思い出を噛みしめるように時間を掛け作りあげた強固なマティエールは、繊細さと大らかさを持ち合わせた美しいモノクロームの世界となっている。

准教授・大矢 雅章