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宮内 柚

作者によるコメント

筆で絵の具をキャンバスに乗せていくような描画方法を版画でも出来るのかそういった画面の中で作るリズムやテクスチャーを版画でどういう風に変換できるか考えシルクスクリーンと製作してきました。同じ版を画面上で繰り返すことで、イメージの反復する部分を作り、ひとつのポジフィルムから光を当てる時間を変えることで製版により違いが生まれること、それと同時自分にとっては版画でありながら、刷る場所や重ねる順番はその都度決めペインティングのような(油絵を描いているような、絵の具を盛っていくような描画方法)ライブ感を持ち画面を作る感覚があります。このような技法に興味を持ち、制作してきました。

担当教員によるコメント

宮内のシルクスクリーン作品は、まず製版用のフィルム上に単純な描画ストロークや、或る形象イメージを描く。インクは水をたっぷりと含んでいるため、乾燥までに長い時間がかかり、その間に形態は作者から離れて変化し、独特の階調がそこに生まれる。彼女はそれを原稿にして製版し、形態をリピートしたり、重ねたり、あるいは別の形態と掛け合わせたりして印刷する。そこで生まれる不定形なイメージは単なる抽象性で終始するのではなく、別の何かの意味に繋がろうとする。つまり彼女が求めているのは、意味特定される、求心性の強いイメージではなく、逆にそうした求心性が空回りし、意味が脱力するかのようなあり方なのではないか。このあり方への探求を今後、積極的に展開されていくことを期待したい。

教授・大島 成己