ジェームズ・タレルとイリュージョン

石田 彩

作者によるコメント

本研究ではジェームズ・タレルの作品とイリュージョンの関係について論じた。先行研究におけるタレル作品とイリュージョンに関する見解の齟齬に着目し、イリュージョンを軸としたタレル作品の分類と分析を行った上で、知覚心理学と絵画、そしてミニマル・アートとライト・アンド・スペースの4つの項目におけるイリュージョンとタレルの関係についてそれぞれ考察した。そして、先行研究での混乱を解きほぐし、イリュージョンという観点からタレル作品の独自性を探った。

担当教員によるコメント

ジェームズ・タレル(1943-)は、光を主な素材とした仕事を1960年代後半から行ってきているアメリカのアーティストである。石田さんは、先行研究でこれまであまり掘り下げられていない、タレル作品における「イリュージョン」の問題に着目する。そして、可能な限り日本国内のタレル作品を訪ねて自分自身で体験するとともに、多くの英語文献を駆使して、その問題を独自に整理・考察した。特に、石田さんが本研究においてなしたタレル作品の分類は、今後の他者によるタレル研究に資するものであろう。また、「イリュージョン」という観点から現代美術の展開を捉え直してタレル芸術の位置付けを試みている点も、非常に刺激的で大いに評価できる。

准教授・大島 徹也