ラストレター

山田 隆雅

作者によるコメント

いつか会える、と思っている間に祖父が亡くなった。
会いたい人に会えない、そんな感情の起伏を100枚のドローイングで表現した。また、制約をフェンスに例え、ワイヤーを用いてドローイングを形取ったものをポスターに展開した。
祖父に最後の贈り物として。
そして、再び自由な暮らしに戻れることを祈りながら制作した。

担当教員によるコメント

主たるものとそれ以外のものが同等という価値観が日本らしい表現の特徴として存在する。〝余白〟とはこの意を内包した綺麗な言葉だ。山田隆雅はこの〝余白〟を常に意識しながら様々な課題に対峙してきた学生といえよう。
卒業制作の主題は昨年亡くなった祖父への鎮魂である。会いたい人に会えない耐え難い感情の起伏を100点のドローイングにぶつけた。更にそこで得られたカタチをワイヤーで丹念に再生させる。非常に手の込んだ工程を経た作品群である。清楚なクリエーションが作者の優しさを静かな波動として見る側に届ける。とにかく美しいグラフィックデザインだ。自身の美学を迷うことなく徹底させた創造への姿勢が見事な結果を成就させた。

教授・澤田 泰廣