family album

上田 菜乃子

作者によるコメント

刺繍は「過程」にこそ美しさがある。
中でもクロスステッチという技法は「原案」→「図案」→「刺繍」と姿を変え完成していく。
途中経過であるが故に刺繍を刺す者にしか姿を見せない「図案」を用いて、家族と紡いできた「時間の経過」を表現した。

担当教員によるコメント

優れた建築図面や図像抄を目にすると思わず鳥肌が立つことがある。最終的な成果よりもその制作過程に必要とされる精緻な機能美に、である。「刺繍はプロセスこそ美しい。」〝縫う〟という表現行為にずっとこだわり続けた上田菜乃子の言葉には同様の意が込められていると思う。クロスステッチの図案指定を基盤に自在な展開を見せるスタイリッシュなグラフィック作品は斬新だ。
テーマは家族。何気ない家族のスナップ写真にコンセプチュアルなスケール感を与えた。身近な存在への想いをあらためて見つめ直したクリエーションである。自由に人と会うことも憚られるコロナ禍という異常な状況下だからこそ生じた視点かもしれない。上田は逆境を創造のバネに転化出来る知力と情熱を兼ね備えた鋭利な表現者なのだ。

教授・澤田 泰廣

  • 作品名
    family album
  • 作家名
    上田 菜乃子
  • 作品情報
    ジェネラルグラフィック
    技法・素材:刺繍図案 、Illustrator 、普通紙 、刺繍糸
    サイズ:H1030×W728mm(3点)、H1030×W1456mm(7点)
  • 学科・専攻・コース