あなたとわたしだけ

加藤 英恵

作者によるコメント

本作品では「定義された関係性からの脱却」をテーマに、常に変化しながらも変わらず共に在り続ける二人の女の物語を描いている。それは兄弟姉妹や親子、恋人、友人などの明確な意味を持った言葉を超え、ただ「私は私であり、貴方は貴方である」だけなのだということを、切れ目の無い映像によって表現した。

担当教員によるコメント

卓越した小説的構成と言語表現が素晴らしい。
物語は少女の成長譚でありながら、20世紀に生きる我々が直面している人間の存在について考えさせる。
科学技術の進歩によって、神が創造した人間と、人間によって作りだされた神が、同等の価値で扱われてるような未来であっても、人間が手放そうとしない「人のつながり」について作品は問い掛ける。センチメンタルやノスタルジ—に関連する無自覚な記憶によって、自分というおぼろげな独自性が成立しているのだと物語は語る。

教授・佐々木 成明