漫画による文体練習

廣瀬 そよか

作者によるコメント

「文体練習」とはレーモン・クノーの著書の名前であり、一つの物語をさまざまな文体で書き分けた小説である。本書を参考に、“漫画における文体=描くときの表現方法の違い”と捉え、ひとつのストーリーをさまざまな表現方法に特化させて描き分けた漫画を6点作成した。
「文体練習」においては、あくまで文体がすげ替えられただけで、文章中に含まれる情報量に変化はない。自分の制作の独自性は、漫画のなかに含まれる情報量に差異があり、キャラクターの心情なども、文体によって違いが感じられるようになっている部分であると考える。これは、選択した文体に対する、漫画の構成(どのシーンを描き、どのシーンを描かないか)の最適化といえる。
文体を変えることで、どのように印象を操作しようとしているか、描き手の意図を感じてもらいたい。

担当教員によるコメント

レイモンド・クノー『文体練習』に材を取り、漫画の文体を分類して描き分けた作品である。漫画における「文体」にあたるものを見つけ出して分類し、それらひとつひとつをオリジナルの漫画に仕上げるだけでも大変なことだが、それだけではない。観る人がよくわからないと考えたのだろう、文体の特徴を解説するために一旦仕上げた作品をさらに二次創作した。メタな視点から見れば、それもまた漫画文体のひとつになっている。このように、作者は漫画を描くことを得意としているが、授業の課題では電子デバイスの作品をつくることが多かった。どうしてかと聞くと「カッコイイから」と天真爛漫に答えたが、担当教員としては最後に漫画を描いてくれたことがとてもうれしい。

教授・永原 康史