神話怪獣アスノドン

千葉 弐安

作者によるコメント

アスノドンとは、昭和96年に制作が予定されていた特撮映画「アスノドン 渋谷にあらわる」に登場する架空の怪獣である。別名は神話怪獣。

映画の制作は断念され、フィルムも失われたものと思われていた。しかし令和3年12月にその一部が発見され、リマスター・上映が行われることとなった。現存する映像の撮影地は、福島県双葉郡周辺、東京湾付近の埋立地、多摩川河川敷、の3ヶ所である。

デザインや命名には岡本太郎の絵画「明日の神話」が取り入れられており、同絵画のモチーフとなった原爆をはじめとする核の問題が根底にある怪獣である。
CG全盛の時代であるにもかかわらず、ぬいぐるみ(着ぐるみ)の手法がとられたことも特筆すべき点だ。これは怪獣のなかに人が入ることと、それが人災・人間の業の象徴であることとの重なりに着目しての試みであった。人間らしさの残る動きでよたよたと歩く怪獣にはときに滑稽さすら覚えるが、それは他でもない我々の写し鏡であることを忘れてはならない。

担当教員によるコメント

千葉さんは、3年次から継続して「怪獣」をテーマに作品を制作してきた。そもそも「怪獣」とは何なのか?千葉さんは、怪獣をその時々の社会や人々の深層意識の反映ととらえ、東京オリンピックの開催や、COVID-19の状況下の現代社会における怪獣を創作し、そこに解剖図のようなイラストレーションや、新聞やニュースのような社会メディアのフォーマットを組み合わせる。卒業制作では、プロジェクトの集大成として、岡本太郎の『明日の神話』をモチーフとした創作怪獣の着ぐるみをつくり、それを自ら纏いながら、東京の臨海エリアや福島を闊歩する映像を撮影した(さらに卒業証書授与式においても!)。スケール感や時代感覚が交錯する、不思議な批判的リアリティが生まれた。

教授・久保田 晃弘

作品動画

  • 作品名
    神話怪獣アスノドン
  • 作家名
    千葉 弐安
  • 作品情報
    立体、映像
    技法・素材:ウレタン、ラテックス 、水性塗料、フェイクファー、プラスチック
    サイズ:H2000×W1000×D1200mm
  • 学科・専攻・コース