青果腐敗-Fruits and Vegetables Love-

作者によるコメント

BLは、男性が女性を見るという構造を女性が男性を見るという構造に変える一種の変換装置とも言える。現在、性の在り方はLGBTQといった多様な考え方が浸透しつつある。男性が、女性がというより誰もが見られる立場になる。私は現在の変換装置としてのBLを考える。生々しい性を新鮮な野菜に変えたらホモフォビアを感じるが無くなるだろうか？多様な植物の性は今の時代に似ているのかもしれない。フィクションだから、置き換えてあるからこそ楽しんで青果たちの関係を見れるのかもしれない。青果の性別をそのままに親しい貴方の友人や家族に置き換えたらしっかりみることが出来ますか？

担当教員によるコメント

田上は、3年次からBL（ボーイズラブ）をテーマに、その用語や概念を食品や空き缶などの日用品に置き換え、メタ的に検討するような作品を制作してきた。そうした、BLに対する批評的なアプローチを探っていく中で冷蔵庫内での野菜の組み合わせ（カップリング）とエチレンガスによる影響や、植物の多様な雌雄のあり方に着目し、野菜同士の恋愛関係をモチーフとした漫画作品を制作するに至った。野菜を決して擬人化せず、それ自体が持つさまざまな特性に基づいて物語が構成されていて、そこに田上の真摯な態度が感じられる。また、そうした表現によって、本作品は性別や種族、恋愛関係といった概念を拡張し、マルチスピーシーズな恋愛、BLならぬ「VL（Vegetable's Love）」とも言える新たな領域を生み出している。

講師・谷口 暁彦