ピンクの夢を見る(英題:My Pink Sweet Dream)

井藤 春花

作者によるコメント

アイデンティティや、コンプレックスについて考えて作品を制作してきました。
自分自身のコンプレックスや、葛藤と向き合いながら制作する過程で、悲しみ、焦り、友情、人を突き動かすほどの感情に着目しました。そして、自分勝手さ、醜さなど、普段は避けるような感情も理解することが大事だということ、それがいかに難しく人を苦しめるかを理解しました。
今回、制作を行いながら、現実を直視した上で弱さや後悔を受け入れることが大切だと思いました。
しかし、口で言うのは簡単で、理想を目指すべきだという自分。現実を見ろと足を止める自分。この作品を通して、二人の自分を対峙させようと思いました。
また、同じように堂々巡りに陥っている人が、一歩止まって自分を見つめる機会になればいいなと思いました。

担当教員によるコメント

理想と現実を巡る葛藤と自己認識を描く密室劇映画。「推し」への想いとSNSの情報によって、主人公はアイデンティティを確立していくが、もともとあった本人固有の独自性は喪失してしまう。神や偶像やアイドル、あるいは現代のインフルエンサーとは依り代の様なもの。この作品は自己アイデンティティをテーマとしながら、理想を追い続ける人間の本質的な矛盾を問う。
独特なテンポとリズム感で進行する物語に、様々な新しい映画的発明が内包されている。「ガーリー・フィルム」という古めかしいカテゴリーや「ジェンダー」という流りの言葉をこの映画に冠すのはあまりに安直だ。「自分の悩み」や「せつなさ」を、まっこうから引き受けて、独白するような作者の姿勢と覚悟がなにより尊い。

教授・佐々木 成明

作品動画