光の質感とスクリーン

山口 敏生

作者によるコメント

映像とスクリーンの関係性について探求しました。

円が蠢く映像を、円の輪郭の集合体によって切り取る。
光の粒が加速/停止する映像を、傾斜と半透明の突起を設けることで裏付ける。
円が動く映像を、凹凸のある面によって引き伸ばしたり、変形させたりする。
いずれも「映像をそのまま映す」のではなく、「映像の動きや質を変化させる」という役割をスクリーンに持たせています。
スクリーン上の光が変形したり、スクリーンの周囲に影響を与えることによって、光に質感が生成されていきます。

担当教員によるコメント

「映像を作る」という言葉から一般的にイメージされるのは所謂コンテンツをつくることであり、映像について語られる際には映画やミュージックビデオやコマーシャルなど、どの機能や形式に沿ったものであるかが重要視されている。しかし、山口にとって映像とは光による環境とのインタラクションとして存在するものであると考えている。本作品では、質感を生成するための条件として、光に応答する環境、つまりスクリーン自体の形状を定義することについての探求を行なった成果として、断片によって構成された面、透過した面、凹凸のある面という3つのスクリーンが提示されているが、それぞれに異なる「光の影響範囲」が見出されていたことは、光と環境とのインタラクションにおける操作可能な変数として重要な発見であると思う。今後はさらにこの発見を洗練させていき、映像表現の新しいフォームを完成させることに期待したい。

准教授・菅 俊一

  • 作品名
    光の質感とスクリーン
  • 作家名
    山口 敏生
  • 作品情報
    映像、インスタレーション
    技法・素材:MDF板、アクリル棒材、ケント紙、半透明紙、プロジェクター、レーザーカット
    サイズ:H600×W910×D750mm(4点)、H420×W720mm(1点)
  • 学科・専攻・コース