目は口ほどに、

丸山 孝穂

作者によるコメント

人による感じ方の違いや理由が気になっていたこと、また人の行動や感情には理由があって、それを理解すれば操作ができるということへの興味が制作のきっかけです。この卒制は、些細な興味を一年以上かけて作品へ育てて行った貴重な体験でした。
「目は口ほどに物を言う」とは言いますが本当にそうなの?という問いがタイトルに込めてあります。人は完全には分かり合えない、というのが主なテーマですが、だからこそ伝え合う必要があるよね、という気持ちもここには同時に存在しています。

担当教員によるコメント

私たちは誰もが多かれ少なかれ、自分のふるまいが意図した通りには伝わらず、全く別の解釈をされてしまった経験を持っている。表情や些細な仕草には私たちが思っている以上に膨大な情報が埋め込まれているため、コミュニケーションの際には、その場の文脈などから一部の情報だけを切り出して相手の感情や意図を読み取っている。丸山はこの、コミュニケーションにおける人間の感情の表出と解釈の関係にどのように介入するかを考えてきた。2020年以後、マスクやアバター、Webカムを通じた表情の隠蔽・代替・編集による間接的コミュニケーションが主流になっているが、本作では、一見感情的なふるまいに見える表情が、実は日常的な動作の切り出しであったことを示す構造になっており、人間による表情の解釈の多様性と可能性について鮮やかに提示している。

准教授・菅 俊一