卒業制作優秀作品集2022
絵画学科油画専攻
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B
A. 何を考えてるの?
素材・技法:キャンバス、油彩
サイズ:H1303×W1620mm
B. めまぐるしく
素材・技法:キャンバス、油彩
サイズ:H2273×W1818mm、H1167×W910mm、H652×W530mm、H180×W140mm
久しぶりに家族でドライブをした。妹が寝てしまい、運転をする父と前の母はスポーツの話題で盛り上がっている。時間が空いたので私は何も考えず、いつもの癖でとりあえずSNSのアプリを開いたけれど、車酔いしやすい体質だったので軽く吐き気がしてきていた。そして高速道路や街並みをただずっと見ることにした。
そうすると不思議なことに、夕日に照らされた屋根の色、前の車のライト、街を歩く親子の表情、公園の遊具の形…それらがとても美しく、何もかもが絵の題材になるくらい刺激的に見えてきた。同時に、この風景のすばらしさをすぐに忘れてしまうことが不安になった。かといって、写真を撮ってSNSで呟いてこの感動を伝えようにも、投稿した途端何か自分が見たものとはかけ離れていってしまうような気がした。
そこで私は、書き留めておかないとすぐに忘れてしまう、スマホの写真ファイルには入っていないような風景の記憶についての絵を描こうと思いついた。
担当教員によるコメント
工藤の卒業制作は大小複数枚で構成された絵画群である。どの画面もたっぷりと厚塗りされ、そこに描かれた人物や風景などが織りなす事象を濃密に描き出している。二人の人物が描かれた作品は、完成したように思える地点からさらに手を入れ、作っては壊しを繰り返し、なんべんも上描きされたものだ。この態度は会うたびに新たな関係を再構築するような、現在進行形の人間関係に似ている。二人は親子かも知れないし他人かも知れない。鑑賞者はまるで工藤の制作態度のように、見るたびに解釈を修正しながら不思議な物語との関係を結びなおすことになる。このことが作品に新鮮さを与え、見る楽しみとなっているのは確かだ。
教授・菊地 武彦