卒業制作優秀作品集2022
絵画学科油画専攻
- TOP >
- 卒業制作優秀作品集2022 >
- 絵画学科油画専攻 >
- 吉岡 夏希
心象の庭
素材・技法:ミクストメディア
サイズ:可変
私は普段から庭をテーマに制作しており、今回は特に禅の庭の構造を取り入れ、自分の心の庭、心の環境をモデルに作り上げた。
多くの日本庭園は岩や島を神様や動物などに見たたてて神話の世界や言い伝えを表現しており、この庭も自分の心に影響しているものを岩や島に見立てて表現した。客席を自分の立ち位置として、手前側に家族を意味する大岩、右側のビル群を見立てた社会をイメージした島、左側に自分の目指す目標の島とそれに向かって流れる同じ道の人々の石や砂がある。
そして禅の庭で見られる枯山水は水の流れを表すように、私も白い空間に水の流れをイメージした。川から海へ水の流れが繋がるように私の世界もいろんな島とつながって一つの円のような流れを作った。
担当教員によるコメント
吉岡の卒業制作は半円形に作られたインスタレーションだ。半円形に囲われた内部は人一人が入れるほどの入口が開いている。これによって作品が外からはうかがい知れない私的空間になっている。狭い空間を広がりのある眺望として感じさせることに成功しており、しばらく佇んでいたくなる空間を作りだしている。そこに描かれたシンプルな点や線が「見立て」として変容しているさまは見事だ。その意味でこの空間は禅寺の庭園に通じていると言えよう。
今年の卒業生は学生生活後半の2年間をコロナ禍に苛まれた。幽閉同然の生活を余儀なくされたわけだが、その環境下で吉岡は、自分と自分を取り巻く空間に対して再認識したに違いない。その結果がこのインスタレーションに結実していると言える。
教授・菊地 武彦