Multiple self-portraits

堺 大輝

作者によるコメント

自己に対する手触りのようなものを確認していくように、自画像というモチーフを描き続けてきました。それは自己というものに対して能動的に向かっていくようなものであったと思いますが、制作を続けていく中で自己を捉えていく手つきやモチーフとの関係性が少しずつ変化していくのを感じていました。何かしらの光が自己に向けられて、そこから反射されたものを増幅させていくような、そういったことが最近の制作において重要な意識だったように思います。今後も自己と絵の関係性や制作の中での様々なもののバランスは変化し続けていくと思います。その都度、自分の感覚を認識し直しながらこれからも描き続けていきたいです。

担当教員によるコメント

彼は、自分の顔を描き続けてきた。ある時は部屋に閉じこもり自分の顔に取り囲まれるように、またある時は壁のように大きな自分の顔に迫られるように。昔から多くの画家は自画像を描いてきた。なぜ描くのか描きたくなるのか、それぞれ何かがあるのだろうが理由をはっきりさせるようなことでもないかもしれない。が、この場合、なぜ自分の顔なのかをついつい問いたくなってしまう。かと言って何を描くべきかを考えてしまうと難しくなるのが絵画。感情を追っているようであったのが、ただ繰り返し何回も描くなかで、まるでパターンのようにもなってくる。自分の顔をひたすら描くということ、見るということを通して、絵筆を持った自分が果たして何を求めているのか自問しているかのようである。

教授・髙柳 恵里