鼓動する/そっと、吹きこむ/ゆれる

太田 幾

作者によるコメント

この3枚の絵は、心臓の柔らかい部分と繋がって臓器の中を触りながら描いている感覚がありました。絵の中の心臓の鼓動と、自分の心臓の鼓動が重なり、血液がぐるりと循環した時、絵が深く息をしていました。
描いていて、私自身本当に救われました。
切実に、絵と自分と向き合って生きていきたいです。

担当教員によるコメント

ラップフィルムを敷いて雫のように散りばめられた色彩の粒、彼女の手のひらから生まれた無数の粘土の塊は虹色に染められていた。しばし描く手を止めて立体制作を続けた彼女は、「眼球の裏側」でモノを見る体験を語る、その頃から網膜に映るイメージの解体が始まり、蛹の中で身体が融けるような感触を得たのかもしれない。この絵に向かった時に見える光は、絵が内から発光している?といった物理現象でなく、何というかキャンバスを覆う絵具の層を境界に、あちら側から透け漏れてくる質だ。厚い画面に反して、薄く柔らかなベールに内包される体感、それは、私が立つ場のスケールをすっぽり覆いこみ、あちらとこちらを逆転させていくような大らかさを持つ。そんな幸運な奇跡を作者は信じている。

教授・村瀬 恭子

  • 作品名
    鼓動する/そっと、吹きこむ/ゆれる
  • 作家名
    太田 幾
  • 作品情報
    素材・技法:キャンバス、油彩
    サイズ:H2590×W1940mm、H2590×W1940mm、H2590×W1940mm
  • 学科・専攻・コース