Chatty ghost

木村 美有

作者によるコメント

一枚ずつ絵と向き合い、かける時間や緊張感も異なるなか描くことで、小さくてもそれぞれ違ったことを見つけその度に心が揺さぶられていました。すべて絵のおかげなので嬉しいなと思います。これからも自分が驚ける絵を目指して描いていきたいです。

担当教員によるコメント

漂う空気に嗅覚を甘く刺激され、そのメレンゲのような画面に触れたくなって近づいてみれば、意外にも粗野で意志の強い筆跡に押し返されて我に返る。白い壁を味方につけた3点の絵は、なんとチャーミングで美しい佇まいか。誘われるままに目で追う図像は、端から掻き消され脳内に姿を成しては影となる。その残像に重なるように置き換えられていく色彩は、複雑に瞬きながらも手に取る実体がまるで無いのだ。砂場の子供のようにサラサラと、崩れ落ちそうな山を懸命に、しかめ面でキャンバスに描き留めたに違いない。いつもアトリエで見かける素直な後ろ姿、壁一面に貼られたドローイングと試行錯誤、決して諦めない強い心は、4年間で築き上げた絵との親密な関係となって、作家の姿を現した。

教授・村瀬 恭子