高齢者のすり足歩行による転倒リスクを下げる院内シューズの提案

志村 優

作者によるコメント

リハビリ外来に訪れる患者の多くは高齢者である。実際に病院へ足を運び院内動線を観察したところスリッパを履いた高齢患者が院内の小さな段差につまづく様子が多く見受けられた。つまづきは転倒の一番の要因であり、既存のスリッパの形状が転倒リスクをより高めているのではないかと考えたことから、ソールやアッパー形状の工夫でそれらを解決できないか検証を重ね、足元から院内環境の改善を目指した。従来のスリッパよりもつま先部分に角度をつけ、アッパーを踵までつなげることですり足歩行の高齢者が転倒しづらくなるフットウェアを提案する。

担当教員によるコメント

玄関で靴を脱いで床に上がる。なんということもなさそうに感じてしまうが、文化的な習慣というものは、意識の外にあるものなのだということに改めて気づかされるデザインである。脱いだ靴を揃えて向きを直す。スリッパに履き替える。この一連の動作が、多くの病院の入り口にもある。特に高齢者の転倒リスクという視点に立ってみると、スリッパは履きやすさがあるものの安定しづらいことに気づく。デザインの解決策として身近なものの可能性を丁寧に探求する姿勢、医療現場での地道な観察と学科内先行研究など情報収集、試作検証のプロセスを高く評価した。今目の前にあることに向き合い、気を配り対応していくデザインは、やがて暮らしの場面で隅々に行き渡る価値観を醸成していくだろう。

教授・大橋 由三子

  • 作品名
    高齢者のすり足歩行による転倒リスクを下げる院内シューズの提案
  • 作家名
    志村 優
  • 作品情報
    技法・素材:サンペルカEVAフォーム、立体成形
    作品形態:フットウェア
    サイズ:約H100×W290×D100mm
  • 学科・専攻・コース