Blue mask

柴田 真央

作者によるコメント

会場に置かれた青い造形物。それをリアルタイムで画面上に映し出し、ブルーバックを利用したクロマキー合成を行う。青い作品はカメラの前を通り過ぎる人々と共に、クロマキー合成を施された映像として、リアルタイムでモニターに映し出され、そこには現実とは異なる姿が現れる仕組みだ。
Covid-19により、表現の場が今までのように行われづらくなってしまった現在に於いて、作品の物体としての存在はどうなってしまうのかを考えた。画面上では見ることはできないが、足を運ぶことにより見ることの出来るインスタレーションを構成したことで、彫刻としての存在性、不在性について追求する。
それは言語や視覚にとどまらない多様化したコミュニケーションを意識させ、作品を通した身体の感覚や時間、空間を感じさせるような表現に臨んだ。

担当教員によるコメント

青いオブジェ群の中に、クロマキー合成が施されたモニターとカメラの置かれた『Blue Mask』は、実体としてのオブジェに囲まれながら、同時にそれらを無体としてモニター上に視るといった、パラドキシカルな内容のインスタレーション作品である。対面に変わってリモートが主流となった昨今の社会的日常から、“実と虚の対置”が呼び起こされたことは想像に難くないが、それよりも注目すべきは、存在/不在、流動/停止といった二元論が、哲学的解釈を遥かに超え、身体感覚を伴った転換行為として扱われている点にある。通念化した二項対義を、能動性を伴った知覚へと導く本作の真意は、現状を疑問視し変えていこうとするアートの力なのではないだろうか。抑制が強いられる社会とそこに帰属する自分を見据え、意欲的に制作に取り込む柴田の、さらなる今後に期待する。

教授・笠原 恵実子

  • 作品名
    Blue mask
  • 作家名
    柴田 真央
  • 作品情報
    技法・素材:モニター、ブルーシート、発泡ポリスチレン、webカメラ
    サイズ:H2000×W6000×D600mm
  • 学科・専攻・コース