ギフト

WANG Chenyue

作者によるコメント

大学四年次の制作では、家族や友人など、周りにいる親しい人をモチーフに、彼らの顔、皮膚、身体、表現といった細部の描写に力を入れた。制作している中で、人間のすべての行為は人の心の外在表現だということに気づいた。自分の場合はどうすれば他人が喜ぶのかを考えて、「他人の気持ち」が行為の原動力になった。この「好意」は一種の「自分を削る行為」として認識することができるが、実際には、他人を喜ばせるためではなく、他人を喜ばせるような行為を通じて自分自身の価値を認めるためだと認識していた。このような付与と獲得が同時に存在する心理的な状態は人間の矛盾性と複雑性を表している。この作品で私の「好意」を「ギフト」にして自分の心理的なメカニズムを検討する。

担当教員によるコメント

大変しっかりと細部まで彫り込んだ木彫による自刻像である。
作者は表現する事のリアリティーを自らと他者、あるいは社会との関係性について深く考え、その有様を客観的に見つめながら彫刻表現の中に表そうとしている。
技法的には樟の原木から主要な部分を彫り出し、同じ原木から切り分けた材木で下げた脚の部分を寄せ木している。

教授・川越 悟