豊臣秀吉量産計画

岩熊 萌衣

作者によるコメント

地元の友達が幼少期の興味関心とはかけ離れた職業についていることがずっと気がかりであった。もちろん、明確にやりたいことがある人の方が少数なのは承知であるし、その形が正解だとは思わない。しかしその原因が個人の努力の範疇ではなく、そもそも選択のための材料が少なかったことにあるのなら、生まれた環境の違いで人によって制限があったり条件が違うことは大きな問題である。そこで卒業制作では国内外に存在する、生死に関わる訳ではないが相対的に貧しい子供達を主な対象に、教育において「出会う・知る」の場面が家庭に依存し、親や地域の影響を強く受けるために貧しさが受け継がれていくことを問題として、地元鞍手町を一例に地域と一緒に成長していくコミュニティとそのシステムの提案を行った。

担当教員によるコメント

私たちは普段インターネットによっていくらでも検索して情報収集できるような気になっていることがある。子どもが望む教育についても同様にさまざまな情報にたどり着けるはずだと期待してしまう。だが検索ワードが異なれば結果も異なる。リコメンドしか見ていないこともある。この作品は、例えてみれば、思いつく検索ワードの少ない子どもたちが自力で自分の未来を想像しようとしたとき「他にもあるよ」という情報提供の機会を、移動式の児童館を軸に地元の大人たち、全国で専門分野を学ぶ学生をつなぐことによって作り出すという提案である。教育格差の本質を実体験と取材から探り、実践を通して仮説構築し、具体的なデザインまで吟味した点を高く評価した。点から線を引くにはもう一つ点があるといい。そうして引いた線はさらに先の点を求めたくなるに違いない。

教授・大橋 由三子

  • 作品名
    豊臣秀吉量産計画
  • 作家名
    岩熊 萌衣
  • 作品情報
    技法・素材:スタイロフォーム、ベニア板、強化段ボール
    作品形態:コミュニティシステム
    サイズ:約H2600mm×W4000mm×D1600mm
  • 学科・専攻・コース