V12 ChapterⅡ

税田 天音

作者によるコメント

ロマンのない現実論は苦い味がする。私は生粋の車おバカの一人として、カーボンニュートラル化によるEVシフトへの疑念が拭えないでいた。しかしある時、水素エンジンの技術を知り、募るはてなに感嘆符が付いた。「自動車のヘリテージやヒストリーを愛する者にも希望の未来があるではないか??!」そうして私はかつて無い水素エンジン車”ならでは”の造形に挑戦した。水素と酸素が結合し水が生まれ落ち、水面には波紋が広がる。その姿を造形テーマとし、液体水素タンクや冷却装置を盛り込んだパッケージにて造形提案を行った。FRながらMRにも思えるプロポーション、タンクを魅せるデザインが水素エンジン車らしくある。EVと共存し内燃機関の歴史を後世に残していく、古きに学び古きを愛し、エキゾーストサウンド轟く未来こそが私のロマンである。

担当教員によるコメント

BEVに世の中が舵を切ろうとしている2023年。FUVでもなく、水素燃料の内燃機関によるスポーツカーの提案を卒業制作のテーマとして許可することは、担当教員としても勇気のいる決断?であった。言い訳としては、彼は自分でも古いフランス車を所有し、それを丁寧に、コツコツと限られた経済力の中で修理しながら苦楽を共に生活している、いわゆる「エンスージァスト」であることに共感したことと、環境問題は大変深刻だが、そのツケを100年間進化し続け、今や芸術の域に達した内燃機関に転嫁することに、個人的にも釈然としない思いがあったためである。この提案は、学生という立場を利用して、それらのフラストレーションを晴らしてくれたと感じている。2023年4月から彼は、世界最大の自動車メーカーのデザイナーとして働くことになる。
どうか初心を忘れないで挑戦し続けてしてほしいと願う。

教授・田中 秀樹

  • 作品名
    V12 ChapterⅡ
  • 作家名
    税田 天音
  • 作品情報
    技法・素材:3Dプリント、レーザーカット、PLA、ナイロン12、紫外線硬化樹脂、アクリル、Rhinoceros、Photoshop、Twinmotion、クレイ粘土
    作品形態:モビリティ
    サイズ:H217×W420×D1020mm(1/5スケール)
  • 学科・専攻・コース