一筆日記

二唐 彩乃

作者によるコメント

書道は、私にとって美術や音楽と同じくらい身近な芸術である。しかし、多くの人にとっては敷居の高い未知の世界。一筆日記は「準備・片付けが面倒」「綺麗に書かなければいけない」という書に関する固定観念を変えることを目標とした。
筆を洗う必要のないコンパクトなつけ筆ペンは、片付けの手間を軽減する。また、ガラスペンのような美しさを持ち、手元に置いておきたくなるデザインを目指した。そして、書の鑑賞と日記を振り返る行為が似ているのでは、という気づきから、日々の出来事や思いと共に書を綴るノートを制作した。字形の良し悪しという目線を捨て、書いたときの感情を思い起こしながら書を味わう。一筆日記は、書を純粋に楽しむための道具である。

担当教員によるコメント

面倒な準備や片付け不要で使える「つけ筆ペン」と、想いを籠めた書を綴ることができる「一筆日記」は、発明的な書道具だ。
この二つの道具のデザインの背景には、「より多くの人に気軽に書道を楽しんで欲しい」という二唐さんの思いがあった。研究過程では、VRによる三次元書道の実験や、穂先の素材や形状の研究など、大学院レベルの論文が書けるほどの試行錯誤を行っていた。つけ筆ペンと一筆日記のデザインには、この濃厚な研究成果が伺える。両者の形、材質、構造すべてにおいて、彼女の書道愛や思考の厚みが昇華されており、高品質な筆ペンを製造している文具メーカーでプレゼンテーションも行い高い評価を得ている。近い将来商品化されることが期待できる稀有な卒業研究だ。

教授・安次富 隆

  • 作品名
    一筆日記
  • 作家名
    二唐 彩乃
  • 作品情報
    技法・素材:透明樹脂、プラスチック、紙
    作品形態:筆ペン・ノート
    サイズ:筆ペン=H153×W54×D54mm/ノート=H152×W160×D33mm
  • 学科・専攻・コース