入学定員―37名

入学試験科目・配点・日程
 2月16日(土)
  外国語(100点)―12:00〜13:00
  小論文(150点)―14:10〜15:40

小論文(90分)
問題1
 別紙の文章を読み、その主旨を踏まえながら、思うところを400字から600字で述べなさい。

 いわば「他人の絵」についてばかり書いていた私のペンとインクが、ある日、奇妙な衝動に駆られはじめました。
 それが「自分の絵」であることに気がついたのは、うかつなことに、しばらくしてからでした。
 しかし私は気ままに、頑固なほどに、文字でもなく絵でもない、ひとつの空所からの使いを愛しています。
 その「空所」とはなにか。いまはもつぱらこの紙の上の線の軌跡が語るのにまかせましょう。

 なぜ絵を描く?
 それにもかかわらず、これはどこからともなくやつてくる質問です。私はそれが現われるのを独りで待つていることがあります。未明であれ、深夜であれ、その覆面の問いは矢庭(注1)に私をつつんで、どこへか拐かす(注2)ことがあります。まるで疾風のように。
 そして私は投げだされています。1枚の紙きれと一緒に。

 ここにあるのは、ペンとか小さな棒きれ、インクや少量の水、それから妙な習性をもつたその場の気紛れな道具だけです。
 この夏の夜、小さな昆虫たちが私の動作を見まもつている証人です。
 燈火をめぐつて、かれらも線の軌跡を描いています。おそらく太陽と錯覚しているのでしようか。
 しかしかれらこそ空所からの使者のように、姿をあらわし、やがて姿を消すのでしよう。もうひとつの太陽にむかつて。

瀧口修造(注3)「私の画帖から」(大阪・北画廊)個展パンフレット1961年8月

注1:矢庭に=やにわに/注2:拐かす=かどわかす
注3:瀧口修造(1903年〜1979年)は詩人や美術評論家として知られるが、1960年頃からは独自の絵画作品も制作するようになった。この文章は彼自身の個展に際して書かれたものである。

問題2
 封筒の中に長さ1メートルの紐が入っています。この紐を手にとって眺めながら、そこから引き起こされる考えを、400字から600字で自由に述べなさい。

 

 本学科は、多様な芸術ジャンルに対し、開かれた視野を持ち、確実な事実認識と独創的な発想が両立しうる人材を求めています。そのため外国語の基礎能力と論理的な思考力とを同時に併せ持つことが入学試験に合格するための条件となります。「外国語」「小論文」が出題科目となっているゆえんです。
 「小論文」においては、論旨の明確さ、文章表現力、発想の独創性などが採点の重要なポイントです。課題としては、たとえば文章や図版などが提示されます。ここで問われるのは、知識というよりはむしろ、対象と向き合ったときの観察力、読解力、想像力、思考力なのです。うわべの知識を書き連ねたり、無関係な感想を述べたり、入試対策用に訓練された文章であったり、言葉遣いや漢字がでたらめであったりしては評価されません。自分の目で見、自分の心で感じ、自分の頭で考え、自分なりの文章で書く。それが肝心です。
  

入学定員―20名

大学入試センター試験科目
 外国語(100点満点に換算)
  英、独、仏のうち1科目選択
 国 語(100点)
  国 I 、国 I ・国 IIのうち1科目選択(近代以降の文章)
 地理歴史(100点)
  世A、世B、日A、日B、地理A、地理Bのうち1科目選択

本学での個別学力検査
 2月15日(金)
  面 接―午前班10:00〜
  面 接―午後班13:40〜
   

 現在、芸術学科は、大学入試センター試験利用入試において3科目を課しています。これから広い意味での芸術の研究を志す人たちには、各科目間のバランスのとれた学力が必要だと強く感じているからです。
 面接試験においては、文化・芸術に対する各自の関心のあり方、感受力、洞察力等をチェックし、同時に、会話や陳述におけるコミュニケーション能力を見ます。
 また、大学入試センター試験での成績をふまえた上で、学力では見いだせなかった受験生の特質を知ることも面接試験の大きな目的となっています。従って、質問事項もそのような視点から設定し、学力と面接成績との総合のなかで、社会・文化・芸術を考える能力を判定することにしています。
   

入学試験問題・「実技」参考作品集2002