絵画学科油画専攻
平成16年度入学試験

入学定員―118名

入学試験科目・配点・日程
 2月10日(火)

  国 語(100点)―10:00〜11:30
  外国語(100点)―12:00〜13:00
 2月11日(水)
  鉛筆デッサン(150点)―10:00〜16:10
  (12:30〜13:40は昼休み時間)
 2月12日(木)
  油彩「人物」(150点)―10:00〜17:10
  (12:30〜13:40は昼休み時間)

実技問題

鉛筆デッサン(5時間)
 与えられたモチーフ(粘土)で自由に造形し、「沈黙」をテーマに描きなさい。

配布:油粘土
 ・粉末顔料の使用は認めない。
 ・水、溶剤等の使用は認めない。
 ・参考資料等の持参は認めない。
 ・上記に違反した場合、失格になることがある。
使用紙:サンフラワーペーパー・M画・B3

油彩「人物」(6時間)
 「旅する人」を表現しなさい。(人物は与えられたモデル)
 ・粉末顔料の使用は認めない。
 ・参考資料等の持参は認めない。
 ・キャンバスは大学で用意したものを使用する。
 ・上記に違反した場合、失格になることがある。
使用紙:キャンバスP15号

実技問題出題のねらい・意図

鉛筆デッサン
 配布した粘土で一人ひとりに自分のモチーフをつくらせることにより、受験生の「かたちと空間」に対する意識を見た。また従来はモチーフをどう扱うかにポイントが置かれることが多かったのだが、造形させることによりモチーフ自体の幅が広がり、同時に作品の幅が広がることを意図した。
 さらに、テーマ「沈黙」から引き出される発想力および描写を含めた表現力を見た。総合的には、一人ひとりが自分の本当に表現したいものをもっているか、その表現の方向性が明確に作品に反映されているかを見た。

油彩「人物」
 黒の長袖Tシャツ、ブルージーンズ、スニーカーを着用し、両手を膝の少し上に置き椅子に座ったモデル。受験生には恐らく経験があり、よく練習した人物でありポーズであろう。そこに「旅する人」というテーマを与えることにより、従来のマニュアル的な人物に対する感覚を脱ぎ捨ててもらい、一人ひとりが潜在的にもっている人物表現を素直なかたちで表現してもらおうと意図した。
 油彩表現における技術および色彩感覚などはもちろんのこと、作者が与えられたテーマからイメージをどのくらい広げることができるのか、どんな世界観をもっているのかを見た。
 自由度の高い出題において、表現のなかに何か主張するものが見えるか、何か工夫しようとしているところが見えるか、に期待した。

実技問題採点のポイント

 描くための技術や感性が要求されるのは当然であるが、それのみで制作される作品には魅力がない。今回は、下記の点に採点のポイントを置いた。
1. 出題に対して真正面から取り組んでいるか。
2. 出題に対して自分なりの工夫を試みているか。
3. 発想や主張などの思考のあとがみられるか。
4. 表現したいという強い意欲が感じられるか。
5. 個性や可能性が感じられるか。

鉛筆デッサン
 デッサンにおいては、例年見受けられる傾向ではあるが、出題を無視してモチーフ(粘土)と関係なく「顔」や「手」を主役にし、テクニックのみを見せるような作品が多く見られた。「沈黙」という言葉によるテーマを、各自の発想のてがかりや主張のヒントとして積極的にとらえ、利用してほしいと思っていたのだが、関わり方が少ない印象を受けた。
 そんななか、高い評価を受けたものは、テーマに沿ってモチーフ(粘土)に積極的に取り組み、あるいは積極的に造形し、さらに鉛筆デッサンの表現のなかにも個性が感じられるものであった。

油彩「人物」
 油彩においても、どんな問題が出ても“自分流に描く”と決めこんで入試に臨んだところ、テーマ「旅する人」が与えられ、すぐに発想を切り替えてテーマに沿って制作した人と、あくまでも自分の決めこみで描いた人がいたことがはっきりと感じられた。前者は、電車やバスの車内に人物を配したり、自然や街の様子を背景に入れたり、コスチュームに旅の香りを感じさせようとしたり、帽子やバッグ、小物を描き込んだり、人物の表情や視線などにもその思いを映しこんだりと、作品はバラエティーに富み、その発想や工夫は大変興味深かった。後者の作品は、単なる人物画の域を出ず、その人の主張が感じられないものが多かった。