TAMABI NEWS 75号(早稲田大学×多摩美連携特集)|多摩美術大学
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KOO︵クーブ︶ ﹄ 。ブロックで⾃由な ﹁かたち﹂ をつくり、 ﹁プログラミ ング﹂ によってVh.ear go﹄と、 ICF-50﹄ 。前チ6コンセプト=全体を貫く基本的な観点・考え⽅。指先程度の⼤きさしかないイ ンナーイヤーイヤホンから南⽶向けに発売されている巨⼤スピーカーまで、 多様なプロダクトを⼿掛ける。ロボット ・ プログラミング学習キット ﹃スタ イリ9(1990年│プロダクトデザ イン卒 )クリエイティブセンター スタジオ2 チーフアートディレクター詫摩 智朗さんな役割です。さらに、個々の製品だけでなく、⼤きな視点で「ソニーらしさとは」という点でのディレクションも⾏っています。多摩美での学びにおいては、多くの先⽣が、家電メーカーや⾃動⾞業界などの⼀線級の経験者であることは⼤きかったです。社会のトップレベルの基準が⾝近にある。このレベルに近づければ、社会に出ても何も⼼配がない。そういう環境は貴重でした。それに授業での同級⽣との競争もすごく勉強になりました。まわりには知⾒、⼿技共にすごい⼈たちばかりで、⾃分が敵わない部分を⾒せつけられました。そこで考えたのが、すでにある分野で勝ち⽬がないなら、新しい分野で勝負していこうということでした。 今も根 強く残っている、新しいことにチャレンジしたいという姿勢は、この時に育まれたのかもしれません。ほかにも、トライ&エラー の習慣や細部への作り込みというのは、多摩美の伝統だと思います。学⽣の作品集を⾒ても多摩美⽣のクオリティは⾼い。それは、「ある程度のクオリティに仕 上 げなければ成果として出さない」という感覚があるからでしょうね。という逃げの理由でデザイナーになれることは 絶 対 にあり得ません。多⽅⾯の知識、語学も含めたコミュニケーション能⼒、プレゼンテーションには論理的な思考が必要です。ひとつのことを掘り下げて考えることも⼤ 事、かと⾔って他が疎かになるのもいけない。学⽣時代は、幅広く様々なことを学んでほしいと思います。現在はチーフアートディレクターという⽴場で、ウォークマンやヘッドホン、スピーカーなどオーディオ製品全体について、誰に向けてどんなものを作るのか、デザインの⽅向づけを⾏うことが主勉強が嫌いだからクリエイティブセンター  UX*プラットフォー ム デ ザ イン グ ル ープ   デザイナー⽥村 綾⾹さん (2008年│情報デザイン卒)商品やサービスを購⼊してから飽きずに使い続けてもらうための仕 掛け、デザインを作ることです。振り返ってみると、⼤学で学んだ⼀つひとつに意味があり、今につながっているなと感じます。「⾳楽プレーヤーの中で起こっていることを⼨劇で表現する」といった課題など、最初は意味がわからず友達と腹を⽴てたことも(笑)。サービスデザインの授業では、「観光客を観察し、気持ちを捉える」という実習を⾏いましたが、後者からは「シーンごとのユーザーの気持ちを考える」こと、前 者 からは 、「情報をわかりやすく、楽しく伝える」ことを学んでいたんだと、働いてからわかりました。また、仕事においては先輩も同様、共に初めての分野への取り組みとなることも多いので、⾃分で考えて必要なものを⽤意します。それも授業課題で取り組んできた環境と、根本的に同じだと感じます。もし、中⾼⽣時代に絵だけ、あるいは勉強だけを頑張ってきたとすれば、私は今、ソニーにいなかったでしょう。ソニーには⼀般の難関⼤学出⾝の⼈も多くいますが、私は絵の勉強もしていたおかげでその⽅たちと⼀緒に働けていると思います。またビジネスの現場では、デザイナー以外にも誰にでも伝わるよう論理的な説明ができることも重要ですが、これは学業側のスキルかなと思います。両⽅を頑張っていたことに⼤きな意味があり、今に⽣きています。去年担当した『KOOV(クーブ)』のプロセスのお話をします。デザイン部署では⼦どもへのリサーチから始まり、コンセプト*を固め、製品を作りあげていきます。その中で私の仕事は、顧客が(2002年│プロダクトデザ イン卒 )す。 課 題 はコンセプト*の⽴案から与えられるのですが、課題に適した斬新なコンセプトをうまく形に表現できていると⾼く評価されます。その⼀連のプロセスを徹底して学びましたが、これは社会に出ても同じです。「コンセプトありきの造形」、そ う い った意識を多摩美⽣は強く持っているのではないでしょうか。それを顕 著 に感じたのは、ソニーの就職試験です。他⼤学と多摩美の学⽣数名で試験を受けましたが、多摩美⽣の場合は客観性を備えた独⾃のコンセプトの⽴案から、それを理にかなった造形に落とし込む造形⼒まで、製品として通⽤するレベルの提案ができていると感じました。そして、社会での即戦⼒的な⼒を得られた理由には、現役で活躍されている先⽣⽅の⽇々の厳しいご指導が挙げられます。締切時間の厳守。プレゼンに間に合わないと評価は⼀切つきませんし、ソニーご出⾝の安次富先⽣も、「何やってもいいんだよ」とおっしゃるのに、⼀定のクオリティに到達しないと⾮常に厳しかった( 笑 )。また、3年⽣から始まる産学官共同研究も貴重な経験でした。私は、松下電器産業(現・パナソニック)など4社もの企業を経験させていただきました。構造、素材、製造⽅法などにも踏み込んでいくのですが、これは他⼤学ではなかなか得ることのできない経験ではないでしょうか 。クリエイティブセンター スタジオ2   デザイナー杉⼭ 直樹さん現在、私は、ワイヤレススピーカーと中南⽶向けの⼤型オーディオの2つのカテゴリーを扱うチームに在籍しています。学⽣時代を振り返り、今に⽣きていると感じることは、ものを作る時の「考え⽅」で多くの先⽣が⼀線級の経験者であることは⼤きかった。授業でやっていたことが、そのままソニーの 仕事と地続きだった。実践的な学びと企業との共同研究。社会と同じレベルで鍛えられました。

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