TAMABI NEWS 76号(パブリックアート特集)|多摩美術大学
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Installation view at PeptiDream Inc., Kanagawa, Japan, 2017 ©Hirose Satoshi photo by Ken Katoart produce : TAK PROPERTY INC. Design & Art Division (P2、5)撮影=上原芳⼦5空間全体をインスタレーション ⼊⼝や庭など敷地内の随所に作品を設置。企業理念に賛同し、その特質をアートによって具現化しようと努めた。世界の各都市、北極・南極へと向かう 広場に設置された円柱には向かう先の地名と距離を刻印。夜間はライトアップされ 、昼間とは異なる顔つきを⾒せる。廣瀬智央(89年 グラフィックデザイン卒業)「PDPS」「ビーンズコスモス」「ブルードローイング」 17年設置岡本敦⽣(77年 ⼤学院彫刻修了、⼯芸⾮常勤講師)「地球・⼀個の球体のために」 93年設置随所では、廣瀬智央さんによる作品が企業の精神性を代弁している。設 置された18点の作品は、建 物の装飾として寄り添うだけではなく、次世代創薬技術を担う同社の先進性の象徴となって、⾒る者に雄弁に語りかける。 2007年に始まり昨年も開催された「アートアワードトーキョー丸の内 2017」は、丸の内を活性化させたい企業が経済・社会・環境・⽂化のバランスの取れた「世界で最もインタラクション (交流)が活発な街」を⽬指して、芸術系⼤学、⼤学院の卒業(修了)制作を厳選して展⺬し、賞を授けるものだ。会場のひとつである⾏幸地下ギャラリーは東京駅前の丸ビルと新丸ビルをつなぐ通路で、その両脇にガラスケースを設置、⽇頃から作品展⺬を実施する。昨 年は奥村彰⼀さんが「フランス⼤使館賞」など計三賞を受賞し、ここで作品が紹介された。このように学⽣や若⼿作家の⼿掛けた作品が公共空間で披露される機会も相次ぐ。 そもそも街中の⼈々が集う場所にアートが設置されるようになったのは、ここ最近に限った話ではない。はるか昔から、ヨーロッパでは教会や広場で、⽇本では寺や神社で絵画や彫刻が場所を意識し、その場ならではの表現にパブリックアートが担ってきた役割静謐な空間と調和する絵画 下地に箔を貼りめぐらせ、その上に彩⾊と極薄の和紙、また彩⾊を施す。その作業を繰り返して⽣まれた絵画だ。⽔⾯と⼤理⽯の清涼感 「プレアデス」はギリシャ神話に登場する 7 姉妹のこと。7 つの⼤理⽯の配置はスバル座の形も彷彿させる。神⼾智⾏(01年 ⼤学院⽇本画修了)│16年設置⻑澤英俊(63年 図案〈⽴体インテリア〉卒業、油画客員教授)「プレアデス」 94年設置⼈々の注⽬を集めたものである。 ところが近代を迎えて美術館が登場したこともあり、次第に芸術と宗教が離れていく。やがて20世紀後半には設置される場所を意識した作品が増え、パブリックアートという⾔葉も広まる。⽇本でこの語が使われ始めたのは1990年代の頃からである。 当時の代表例を紹介したい。1993年、広島の新空港開設に伴い、岡 本 敦 ⽣さんが「地球・⼀個の球体のために」を設置。32本の円柱は世界各地の空港などに向かって配置されている。1994年には複合施設の新宿アイランドに⻑澤英俊さんによる「プレアデス」がお⽬⾒えし広島空港[空港・広島]ペプチドリーム株式会社[本社ビル・神奈川]新宿アイランド[複合施設・新宿]フォーシーズンズホテル京都[ホテル・京都]

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