TAMABI NEWS 76号(パブリックアート特集)|多摩美術大学
7/16

撮影=⼩牧寿⾥ 提供=札幌国際芸術祭実⾏委員会7サ ウ ンド 重 視 の インスタレ ー ション ⼤学内の⻑い空中廊下で展⺬。北海道独特の景観と、⾃動演奏によるピアノや鈴、陶器の⾳を結びつけた。地下スタジオから世界に発信 国際的に活躍する蔡國強さん(右の写真)をはじめ、国内外の美術家や地元の⼈、観光客などと交流し、ネットで 放 送 。⽑利悠⼦(04年 情報デザイン卒業)│「そよぎ またはエコー」 17年設置開発好明(93年 ⼤学院油画修了、情報デザイン⾮常勤講師)│「モグラTV」 15年設置現」の発揮だ。開催地の景観などを反映した作品は、当然ながらその場に⾜を運ばないと鑑賞できない。その結果、観光を兼ねた来場者が多く訪れ、地域経済を活性化。経済産業省の後押しも⼿伝って、芸術祭が急増した次第だ。 単に観光客が増えただけでなく、「瀬⼾内国際芸術祭 2013」の会場のひとつとなった直島町では、⾸ 都 圏から若い世代が移住し、年2%強の⼈⼝減少率が1%程度にまで改善。約107万⼈の来場者による経済波及効果は約132 億円に上るなど、まさにアートが町おこしの主役として重要な役割を担った例もある。(⽂化庁「⽂化芸術資源を活⽤した経済活性化」より) 先駆けは2000 年開始の「⼤地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナ ーレ」。この芸術祭では恒久設置される作品も多く、後にさまざまな芸術祭で常連となる開発好明さんの「モグラTV」もそのひとつ。 また、都 市の公共空間で展開された「札幌国際芸術祭 2017」で、⽑利悠⼦さんが「そよぎ またはエコー」を発表。北海道特有の景⾊と共に展⺬した。 この⼆⼈は国内の芸術祭のみならず、海 外での活動も活発である。⽑利さんは2016年、英国の美術誌『Apollo』で「40 Under 40:アジア太平洋地域で最も影響⼒のある40歳以下の神⼾が⼀望できる六甲⼭上で展覧会 2010年から続く「六甲ミーツ・アート 芸術散歩」は*現 環境デザイン公募部⾨もあり、現役の学⽣が選出されるケースもある。北川純(88年 インテリアデザイン*卒業)│「六甲おろし器」 15年設置40⼈」に選出されたほど。 ⼀⽅、芸術祭の中には公募部⾨のある例もあり、そのひとつが「六甲ミーツ・アート 芸術散歩」だ。2015年には北川純さんが「六甲おろし器」を発表、2部⾨全作品が対象の「六甲ミーツ・アート⼤賞」で準グランプリに輝いた。 このように、近年の美術動向を追うと、アートの担う役割が社会の多分野に広がり、ビジネスや地域経済をけん引する例も増えてきたことが分かる。成 熟し閉塞感のある現代社会において、今後こうし た ア ートを求める声の⾼まりが予測される中、卒業⽣たちの作品が、さらに世界に広がることを期待したい。札幌市⽴⼤学[学校・札幌]越後妻有⾥⼭現代美術館キナーレ[美術館・新潟]六甲⼭カンツリーハウス[レジャー施設・神⼾]地域に劇的な変化を与えるアート

元のページ  ../index.html#7

このブックを見る