メッセージ

理事長メッセージ

学校法人摩美多術大学 理事長 藤谷 宣人 FUJITANI Nobuto

自由と意力

「美術は自由なる精神の所産たるを想ふとき、我が美術教育界の欠陥は力説に価するものといふべし。我等同志がこゝに我が美術教育界の欠陥を補填し、我が国美術の振興に寄与せんとする微意に出ず」。1935(昭和10)年に開学した本学の前身校、多摩帝国美術学校の設立趣意書には、当時の美術界における自由独立の壮大な決意を掲げています。この「自由なる精神」は脈々と流れ、今日の多摩美術大学の学風を築いてきました。自由とは、一つの安定した環境のなかに得られるものではありません。人間が日常の活動のなかで、たえず主体的に勝ち取っていくものであることを本学の歴史は教えています。自由には自ずから秩序があります。これは自然界の秩序と同じように人間自然の理によって形成されるものであり、美術教育の場においてはとても大切なことなのです。また自由には自由を自らのものにしようとする意志の力が必要です。創造する者にはそのような「意力」がなくてはなりません。本学の基本理念「自由と意力」は、在野精神による美術教育に根ざしながら、現代においては、さまざまな領域を横断し、より深く追究し、自由な発想で未来を切り開くことができる人材の育成を目指しています。いま、世界は大きな転換期のさなかにあります。芸術文化の領域も多様化しています。転換期においては、高き山に登って天を仰ぎ、地平線を見わたすように過去と現在を俯瞰し、未来を思索しなければなりません。そして、たえず建学の精神に立ち返ることが求められているのです。そのような時代の変化に対応するため、本学では多様な視点から検討を加え教育改革を実施してきました。この改革は今後ともさまざまなかたちで継続されていくでしょう。そして教育環境の充実化にも長年取り組んできましたが、八王子キャンパスにおいてはほぼその建設整備の完成を迎えることができ、今後、上野毛キャンパスの整備に着手いたします。多摩美術大学は、専門性と総合性の融合をめざし、創造力あふれる教育を推進する大学としてトップランナーたらんとしているのです。

学長メッセージ

多摩美術大学 学長 建畠 晢 TATEHATA Akira

新たなる挑戦

いま世界にはグローバリズムの潮流が押し寄せてきていますが、その一方では民族的、宗教的な不寛容な思想が渦巻いてもいます。また私たちの生活を取り巻く情報環境は大きく変容しつつあり、AI(人工知能)などの新たな技術が一気に台頭してきてもいます。芸術の領域もそうした激動する時代状況と無縁ではありえないでしょう。多摩美術大学は80有余年の歴史を通じて、常に芸術の先端的な動向を切り開いてきたと自負していますが、変化の度合いを速める昨今の社会を前にして、挑戦者としてのさらなる意欲をもって本学ならではの使命を果たして行こうと決意を新たにしているところです。
一昔前までは大学は象牙の塔といわれていました。現実の社会から切り離された場所で、何の役にも立たない学問のための学問、芸術のための芸術にいそしむ機関だと揶揄されていたのです。しかし私は必ずしも象牙の塔が果たしてきた役割を否定しようとは思いません。大学が社会に対して積極的な使命を果たすこととは、何も時流に身を添わせたり支配的な体制に迎合することを意味しているわけではないのです。そこには時に批評的な眼差しをもって状況を捉え、また時代を越えて維持しなければならない価値を見極める自立した精神が息づいていなければなりません。
もう一つ重要なことは、変化するばかりではなく文化的な多様性をも増大させつつある社会に対して柔軟に向き合い、さまざまな課題を解決しうる視野の広さを持つことです。本学が専門学科の枠を超えたPBL(Project Based Learning)教育に取り組んでいるのも、どのような状況にも適切に対応しうる応用力の育成をはかろうとしているからなのです。
多摩美術大学は見方次第ではアートの道を目ざす者たちが集う親密なるコミュニティといえるかもしれません。創立以来本学が掲げてきた〈自由と意力〉というモットーは、志を共有する若者たちを鼓舞し、創作や研究活動への積極的な取り組みを誘い、また社会に羽ばたいてからの活動の支えともなることでしょう。私たちは目を輝かせて本学への入学を目ざしている“未来の同志”の皆さんの情熱に大いに期待しています。