理事長メッセージ
アマチュアであり続けるためのプロフェッショナル教育

学校法人多摩美術大学
理事長
藤谷 宣人
FUJITANI Nobuto
1935(昭和10)年の前身校創立にあたって、設立趣意書において「美術は自由なる精神の所産たるを想ふとき、我が美術教育界の缺陥は力説に價するものといふべし。我等同士がこゝに我が美術教育界の缺陥を補填し、我が国美術の振興に寄與せんとする微意に出づ」と、壮大な決意をうたいあげています。
東日本大震災に端を発した、原発事故を始めとする様々な困難に目を向ける時、「教育界の欠陥」に思いを致さざるを得ません。私たち大学人は、「専門職業人の限界」と「知識人の独立」という古典的でさえある問題を突き付けられています。テクノロジーは完全無比なものではありません。これを制御し使いこなすのは専門知識ではなく、より素朴な生活者の視点によるものです。また、これらの行使には「知識人の倫理」が唯一無二の寄る辺であり、その他の何ものからも独立していなくてはなりません。
「教育界の欠陥」は、専門知識の偏重、および知識人の倫理を蔑ろにして来たことです。私たち多摩美術大学は「美術・デザイン領域における専門職業人、独立した作家の育成」を理念としています。この理念は私たちが創立以来堅持するものですが、一方で「教育界の欠陥」に堕する危うさも秘めています。
私たちは、知識人として理念を実現する困難さと決意を、「自由と意力」という言葉で表しています。自由とは、人間が日常の活動のなかで、絶えず闘いとっていくものです。自由には、自由を自らのものにしようとする意志の力が必要であり、創造する者にとってそうした「意力」がなくてはなりません。
課題解決型のPBL(Project Based Learning)教育を軸とした専門領域における学理、確かな技術と表現力を教授するだけでなく、社会参加する専門職業人、作家として、専門領域を社会につなげるための教養教育も重視します。確たる専門知識を基盤に、教養を羅針盤として社会に漕ぎだす力こそ「意力」です。私たち大学人が突き付けられている問題を解決する手掛かりであり、私たちの理念を実現する力がここにあります。
私たちは、果敢にアマチュアたろうとするプロフェッショナルを育成する「知」の集団を目指しています。