コラム記事「創作研究と理論研究」(執筆:本江邦夫)

第2章 教育

図版: 学科と科目の構成

2-1 大学院の展望
○博士後期課程の完成年度 3博士の誕生
○5年制研究科への移行 研究科長を任免する。
○論文指導の充実 美術史、美術理論研究、デザイン史、デザイン理論研究の担当教授を大学院所属に結集する。
○実技研究と理論研究の融和 主査は大学院所属の論文指導教授が、副査は各科所属の専門指導教授が務める。
○リーダーを養成する教育
(執筆:大学院委員長 高橋史郎)

2-2 美術学部の展望 
○芸術系とデザイン系の差異と統合 デザイン学部の独立案もある。
○学部と大学院の実技指導の一環性
(執筆:美術学部長 清田義英)

2-3 造形表現学部の展望
○社会人教育の現状と展望 社会人が高等教育機関で再教育を受け再び社会で活躍する、社会の側も高等教育を支援するといった高等教育と社会の双方向の連携が必要。
○社会人大学院の充実
○志願者数の維持は可能か
(執筆:造形表現学部長 米倉守)


図版:共通教育センタ 構想

2-4 教育方針を形成する組織 
多摩美術大学は、自律した作家や研究者の集まりであり、開かれた組織です。 多摩美術大学は1936年の創立以来、美術とデザインの最先端で創作研究を実践し、絶えず美術教育の在り方を追求してきました。
○共通教育センタCommon-Tamabi構想 各専門実技を縦割りとするならば、それに対して横割りともいうべき各学科に共通する理論研究を、共通教育研究室および大学院博士前期後期が担当する。共通教育センタでは美的感性を豊かにし、自由な発想力を伸ばすための理論研究を中心にして、語学、資格、体育なども行われる。
○カリキュラムの決定方法
○ 科目の整理統合 共通教育科目の意義
○ 美術系とデザイン系の分離と統合 デザイン系共通教育会議 大学院デザイン専攻会議 デザイン4学科会議の議論 事例:情報理論の廃止と復活の議論
○語学教育の重要性と教育効果の実体 外国語教育の改善 会話中心、速読中心等の目的別クラス編制、能力別クラス編制、L.L.ビデオの活用、ネイティブスピーカーの活用 国際化への対応 外国語による授業実施 すべての授業を外国語で実施する
○映像教育が学内に分散している
情報活用能力の育成のための科目
学際的・総合的内容の科目
心身の健康に関する科目
ボランティア活動を取り入れた授業科目や起業家育成のための授業科目の開設
(執筆:カリキュラム委員担当 教務課 )


図版:時間割図、教室写真

2-5 授業形式の見直し 
○履修選択の自由度 各専門学科の提供する開放科目の拡大と運営組織。第5時限の活用。専門以外の分野の学習をさせるための配慮
○学則別表科目の記載方法 基礎科目と専門科目の見直し。科目区分の見直し、必修・選択の見直し、くさび形教育課程の編成、コース制の実績評価
○実技と講義の時間帯設定の評価(八王子の午前午後方式・上野毛の金土方式・他校の方式・完全単位制方式)
○クラスサイズの基準 本学は4000名の在学生を有するが、少数精鋭教育を堅持するために、演習科目と実技科目においては30名のクラスサイズを基準とする。従って、演習系と実技系の類似科目を多数重複して開講をせざるをえない。講義科目については100名以上のスラスサイズが有効である。
○転部転科の制度 進路変更の指導
○オムニバス授業の基準 臨時講師の認知 非常勤講師の採用と現状 インターンシップ チームティーチング 特別講義
○開講時間 9時始業へのアプローチ
○教室空間の仕様 学外授業の基準オフキャンパス 新設レクチャー棟の活用 ディベート型教室 自習アトリエ 24時間利用の要件と克服 
○教材 遠隔授業 e-leaning 教具の拡大 研究資料の充実 情報化への対応 情報処理教育やマルチメディアを活用した遠隔授業
○単位の過剰登録を防ぐため、1年間に登録できる単位の上限を定める
(執筆:教務課)


図版:オープンキャンパス

2-6 志願者の要望と受入体制 
現在、多摩美術大学への入学応募者数は10000人を数えますが、その中から、次世代の美術文化をになう、若い知性と感性をもつ1000名の学生が厳選されて入学します。
○受験生のアンケート集計
○オープンキャンパスと各学科教授による説明会。毎年学外から2000名の高校生が参加。在学生も前期作品発表の場として設定し、全学的に盛り上がる学内行事となっている。
○進学相談会。入学志願者、美術教諭、予備校教員のために開催。静岡グランシップ、新潟フェイズ、高松商工会議所、広島国際会議場、梅田スカイビルステラホール、福岡センタービル、仙台市情報産業プラザAER、JRセントラルタワーズ、ホテルメトロポリタン長野、札幌ガーデンパレス、多摩美術大学上野毛キャンパス
○新入生調査では新入生の99%が予備校などの経験者であり、2学年が予備校講師を務めている場合が多く、新入生の出身予備校グループから予備校の受験指導方針の情報が得られる。美術大学への進学の動機としては、高校の美術担当教員の影響が大きく、高校と大学を接続する役割を担っている。
○多様化な入学制度と問題点 受験生数が10000人近いので入試を分け、学科別の採点評価に適当なスケールの入試とする必要がある。さもなくば1次2次試験制度にするか、入学後の学内進路専攻試験を行うこととなる。
一方、多様な試験の受験の自由度が増すと混乱も生ずるので、試験相互の連携が必要となる。一般入試と3年編入試験の同時受験。大学院と研究生試験。センタ利用入試と一般入試の両方に合格した場合の手続き方法。多数学科を重複出願する場合の経済的公平性。
1) 博士後期課程 2月
2) 博士前期課程 12月(博士前期デザイン専攻)1月(博士前期絵画専攻 彫刻専攻 芸術学専攻)
3) 美術学部の一般入試 2月(11学科)学科試験と実技試験(映像演劇学科は面接もあります)によって、それぞれの学科別に行われます。一部では、大学入試センター試験利用入学試験を実施している。
4) 美術学部の特別入試 10月(外国人留学生 帰国子女入学試験)11月(3年次編入学試験)
5) 造形表現学部の一般入試 3月(3学科)
6) 造形表現学部の特別入試 11月(社会人入学試験 3年次編入学試験)
7) その他の選考
a.科目等履修生 在学中に教員免許状や博物館学芸員資格に関する科目の単位を取得できなかった場合など、本学において教授する授業科目の履修を願い出る者がある時は、選考のうえ、入学を許可することがあります。
b.研究生 本学において教授する特別の専門分野について研究を願い出るものがある時は、研究生として入学を許可することがあります。現状は、大学院予備校的な所も見受けられ、大学院の合格発表後の研究生申し込み受付を要求する研究室もみうけられる。
c.委託生 官公庁および公立団体より1年以上を在学期間として授業科目の一部の学習を願い出る者がある時は、委託生として入学を許可することがあります。
d.外国人留学生許可 外国人が本学学則第十条によらないで入学を願い出る者がある時は、文部科学省または当該国公館の証明により入学を許可することがあります。
○入学制度の検討 自己推薦、一般推薦、特別推薦、特待生、AO入試、併願と重複受験。
○入試の方法 入試の配点と採点の分布。一見は学科と実技が動配点なので学科点重視のように見えるが、実際には実技の採点分布が谷型となっているので実技点重視となっている。いっぽう、学科能力を維持するために学科点に合格最低基準を設定することとなる。従来、入試配点は合格発表後の情報公開であったが2003より募集要項に明示することとなった。外人留学生と日本人学生との感覚の差異を考慮して、海外諸国の美的価値観を採点時に配慮する必要はないか。入試担当者に求められる能力、眼力。入試問題集原稿より。センター試験の利用。
○どのような学生を求めているか。学生の潜在能力。学び意力。表現意欲。明白な目標。動機。
○退学の理由。復学希望者の要望受入体制
(執筆:入試運営委員会担当 教務課  )


図版:各学科ギャラリ展示

2-7 就学にたいする支援 
学生は上野毛キャンパスの3分野(夜間)と八王子キャンパスの11分野(昼間)のいずれかに所属し、制作アトリエ工房を中心とした少人数での専門教育を実現しています。各学科では、最新の美術動向をとりあげ、その問題点や今後の進むべき方向を究明する創作研究が行われています。
○教員の教育に対する取組み 専攻学生の担当教授が、学生から科目登録、専攻、単位などの学業一般について相談を受け、学生の成績や能力を考慮しながら、助言指導を行う。 オフィスアワー
○教育成果物の展示 学内ギャラリの配置 芸術の各専門分野が同一キャンパスで相互に影響しあうことは総合美術大学の大きなメリットであります。絵画東棟ギャラリ 絵画北棟ギャラリ デザイン棟ギャラリ 工芸棟ギャラリ 彫刻棟ギャラリ テキスタイル棟
○成績評価 判定原案作成の事前審査 未修得者の指導と関門制
○学外単位の認定 60単位以内について本学において修得した単位として認定することができる。 a.本学入学前に大学または短期大学を卒業または中途退学した学生の既修得単位について。b.本学在籍中に、国内外の他大学または短期大学において修得した単位について。c.本学在籍中に、短期大学または高等専門学校の専攻科における学修その他文部大臣が別に定める学修。
○交換留学の拡充 外人留学生のためのアドバイザ 交流センタの開設 交流学生展の援助
(執筆:学務課  )
○奨学金の拡大 生活支援
a. 日本人の学部生と大学院を対象とした奨学金制度には、多摩美術大学独自で支給する奨学金と校友会奨学金があり、 行政系奨学金の日本育英会奨学金と地方自治体奨学金、民間奨学育英団体がある。
b. 外国人私費留学生を対象とした奨学金には、日本人対象の奨学金に追加して、文部科学省国費外国人留学生(国内採用)と私費外国人留学生授業料減免制度がある。
○学生相談室障害者対策 聴覚障害の学生の耳代わりとなって、講義を要約しながら筆記していくノートテイクのボランティアの説明会を随時開催し、ノートテイカーを募集しています。校舎施設の障害者対策の現状。(相談室長)
(執筆:学生部次長 植村博)


図版:学外卒業展

2-8 学位と資格の通用 
○学位取得の要件
a.博士(芸術)博士後期課程
b.修士(芸術)博士前期課程 
c.学士(芸術)美術学部または造形表現学部4年以上在学し、所定の基礎教育科目、専門教育科目から各学科、専攻の定める必修科目、選択科目、自由科目を合計124単位以上修得し、卒業制作または卒業論文、卒業研究に合格した者には学位記を授与する。
○学位論文の審査 博士候補の扱い 論文博士の扱い 第一回芸術学博士の授与 修士論文テーマ集
○卒業制作の提出と審査
○各種資格の種類
a.中学校教諭専修免許状(美術)およびb.高等学校教諭専修免許状(美術) 絵画専攻、彫刻専攻、工芸専攻、デザイン専攻を修了し、かつ教員免許状取得に必要な単位を修得した者に交付される。
c.中学校教諭一種免許状(美術)およびd.高等学校教諭一種免許状(美術・工芸) 絵画学科、彫刻学科、工芸学科、グラフィックデザイン学科、生産デザイン学科、環境デザイン学科を卒業し、かつ教員免許状取得に必要な単位を修得した者に交付される。
e.高等学校教諭一種免許状(情報) 絵画学科、彫刻学科、工芸学科、グラフィックデザイン学科、生産デザイン学科、環境デザイン学科を卒業し、かつ教員免許状取得に必要な単位を修得した者に交付される。
情報デザイン学科の学生が(美術)の教員免許状を取得する場合は、他学科聴講の手続きが別途必要となる。
f.学芸員資格証 本学を卒業し、かつ博物館に関する専門科目を取得した者に交付される。
g.一級建築士 環境デザイン学科卒業後、一級建築士は2年の実務経験を経て、受験資格が取得できる。
h.一級造園施工管理技 環境デザイン学科卒業後、3年の実務経験を経て受験資格が取得できる。
i.インテリアプランナ インテリアコーディネータ ナー
インテリアコーディネーター 環境デザイン学科卒業後、受験資格を取得できる。
○審査の実際 美術系 
○審査の実際 デザイン系 自らテーマ設定し課題を発見する。4年次には「卒業研究」を発展させた形で、高度なテーマにも取組む。実習等で身につけた知識・技術を総合的に応用して、解決法を検討。プレゼンテーションの練習、模型や実験装置の製作
○厳格な成績評価の実施 授業科目ごとの成績を5段階で評価した上、それぞれにグレードポイントを付与して、単位当たりの平均を出し、その一定水準を卒業の要件とする
(執筆:教務課  )


図版: 就職先企業

2-9 就職への貢献と評価 
○就職の実績評価は大学の運営にとって重要な問題である。志願者にとっては、卒業後の進路予測が立つから、授業料を投資するのであり、就職または生業という、卒業:出口が見えての入学:入口である。
○各学科別統計/就職数/求人数/卒業数/入学志願者数
○進路指導の体制 各学科の就職指導委員体制
○社会が必要としている人材養成を達成するために与えるべきインセンティブ
○進路希望アンケートの集計2003.10実施 企業への就職希望者 就職を希望しない者 作家活動 進学留学 教職
○卒業生のアンケート集計2004.2実施 現職の業種と在職年期 活躍地域
○企業への就職
産業界からは新しい感性を備えた卒業生が待望されている。デザインを専攻する学生だけにとどまらず、描写力・色彩感覚・形態表現などを研鑽してきた絵画学科や彫刻学科、工芸学科の学生をも、創造的な仕事の担い手として迎えられている。産業社会におけるデザインの必要性が進み、デザイナの職業が確保されてかえあ久しいが、近年の経済低迷と産業の情報化にともない、卒業生に求められるスキルが変化している。
○自営と起業 デザイン事務所経営、作家活動など。親が多摩美大率という第二世代の芸術家やデザイナが増加していることもあり、卒業と同時に自ら起業する例が増加している。
企業に就職するにしろ、これからの時代の雇用は、自らの能力だけをたよりに自立出来る人材がもとめられる。
デザイン作業がコンピュータ化されにつけて、企画力構想力やマネージメント能力が従来に増して要求される。
c.教職 中学校・高校の美術・工芸科教員の採用者は年々減少してきている。これは学齢期における児童・生徒数の減少にともない、教員採用枠の縮小と比例している。633制の学校教育教員に変わって、新たに専門学校・各種学校の教員や、今後大いに必要となるであろう生涯教育における指導者への道が広がりつつある。
○進学 韓国や中国からの外人留学生には大学院への進学希望が多い。多摩美術大学大学院、東京芸術大学大学院、筑波大学大学院、京都市立芸術大学大学院、九州芸術工科大学大学院など。 海外への留学 アメリカ・イギリス・イタリア・スイスを中心にデザイン・建築系の専攻者が多い。
○学科別の主な進路
a.絵画学科
b.彫刻学科
c.工芸学科
d.グラフィックデザイン学科
e.プロダクトデザイン学科
f.テキスタイルデザイン学科
j.環境デザイン学科
h.情報デザイン学科
i.芸術学科
j造形学科
k.デザイン学科
l.映像演劇学科
m.博士前期課程絵画専攻彫刻専攻工芸専攻
n.博士前期課程デザイン専攻教員や企業就職
o.博士前期課程芸術学専攻出版編集、学芸員など
p.博士後期課程美術専攻
(執筆:指導委員会担当 就職課長 畦上洋一 )