授業No.006
授 業:「アートの森」
対 象:川崎市立東大島小学校 4年生(2クラス)27名、25名
日 時:2005年9月15日・16日

身の回りで不要になった素材、ふわふわした原麻や、ねばねばした天然ゴム、ヌルヌルした海藻の紙料を使って、アートの葉を制作しました。ひとりひとりが作ったアートの葉を最後に一本の幹に集めることで、アートの森が完成します。
講 師:半谷 学(現代美術家/1988年武蔵野美術大学大学院工芸工業デザイン学科修了)
9月15日 4年2組・16日 4年1組  9:30〜11:10
「アートの葉について」(レクチャー
半谷先生の紹介のあと、今回の制作物の説明です。今回は、児童が普段触れた事のない素材をたくさん使って制作していきます。
「素材の説明と扱い方」
最初はアフリカ産のサイザル麻に触れて、この麻がロープなどに使われていることなどを、質疑応答を通して知りながら、授業が始まりました。

「制作開始」
午前中は、麻を葉の形に整える作業をしました。まず、うちわぐらいの大きさの竹の枝の上に麻をのせます。

「制作」
 少しにおいの強い天然ゴムの溶液にその麻を浸け、良く絞ったら、枝の上に置いていきます。天然ゴムが糊の役割を果たすので、上から押さえることで、麻どうしがくっつき合い、平たい葉の形に整っていきます。輪ゴムの原料になる天然ゴムは、乾くとベタベタするのでその感触も楽しみながら制作を進めました。

13:25 〜14:35
「素材をレイアウト」
 お昼をはさんで、午後はみんなが持ってきた素材や半谷先生が用意してくれたリサイクルセンターの素材(色々な色のガラスの粒や冷蔵庫のプラスチック等)を葉の上に、自由にレイアウトしていきます。

「紙料をつけていく」
 それらの素材は、紙料(海藻を煮だして、ミキサーで砕いたもの)をのせていくことで、乾燥させ、接着します。紙料には、絵の具を混ぜることもでき、好きな色をつくって、自分のアートの葉をどんどん完成させていきました。麻の間にきれいな色の紙料を指で付けていくことで、様々な素材感を体験することができました。

 



「乾燥させます」
 完成出来た作品は、紙料などで湿っているため、一晩乾燥をさせます。授業終了後、半谷先生の作品をスライドで上映、同じ方法で作られた先生の作品に、みんな感動しました。


「記念撮影」
 制作終了後、半谷先生より授業のまとめのご挨拶、出前アート大学から終わりの言葉を述べました。最後に半谷先生を囲んで記念撮影をしました。


「作品設置」
 ひとりひとりが作った葉の作品を、小学校のプレイルームの天井から釣り下げた幹に差していき、木の形に再生していきます。
「完成」
 みんなの作品が展示され、アートの森の完成です。人の動きで、自然に葉が揺れるように展示されているので、作品の新たな魅力も発見できました。

 

 

出前アート大学授業No.006 「アートの森」
講師 半谷 学 (現代美術家/1988年武蔵野美術大学大学院工芸工業デザイン学科修了)

「アートの森に響く歌声」

 朝からずっと図工室での授業なんて何と楽しいことだろう!先生に素敵な時間割を用意していただいたので、子供たちはもちろん大人も楽しめるワークショップにしようと心がけました。子供たちはいつだって新しい遊びを探しています。遊びのような授業にするため「2つの再生」をテーマにしました。最初に子供たちは裸の枝を手にします。それを使って再び葉の形をした作品をつくり、最後に全員の作品を合わせてアートの森にします。これが1番目の「生命の再生」です。また、子供たちは自分がいらなくなった物(古いオモチャなど)を持ち寄り、それを素材に混ぜたりして作品を制作します。これが2番目の「思い出の品の再生」です。アートの森は彼らの新しい美術作品でありながら、そこを歩けば懐かしい場所にもなるのです。ワークショップは体験が教科書になります。子供たちは新しい素材に触れたり、新しい知識を得たり、新しい出会いを望んでいます。私が用意する素材は再生材料が多く、海藻紙料はドロドロとした触り心地ですし、ゴム液はニオイがありベトベトして扱いにくい材料です。誰もが最初は臭いと言います。しかし世の中には見た目も匂いも良い物ばかりがあるわけはありません。イメージが悪い再生材料からだって、美しい物が身の回りにたくさん造られていることを知って欲しいのです。消臭剤や除菌剤で守られていても、子供たちは本当は泥遊びが大好きです。子供たちは材料の扱いにも次第に慣れて、海藻紙料と絵具を使ったカラフルな泥遊びのように制作を続けました。もしも誰かが図工室を外から覗いたら、室内の創作エネルギーに引き寄せられて、きっと自分もやってみたいと思ったでしょう。ワークショップは子供も大人も軽々と年令を越えられます。明るく接してくれるスタッフ・ワークに支えられて、子供たちの作品は嬉しそうにアートの森のひとつになりました。その表情はとても誇らし気でした。ワークショップの最後に子供たちが歌をプレゼントしてくれました。図工室は52人の大合唱です。歌を聞いていると、心を揺さぶられる感動は美術も音楽も同じなんだという実感がこみ上げてきて思わず涙が流れました。人前で泣いたのは何年ぶりだったでしょうか。こんなに豊かな気持ちになれたのも、スタッフの皆さんのおかげでありとても感謝しています。今後はファシリテーター、アーチスト、各班をまとめるアシスタントの連係をさらに充実させて、参加した子供たちが大人になっても記憶に残るような出前アート大学を続けていっていただきたいと思います。後日、子供たちの感想が鉛筆でびっしりと書いてある学級通信をいただきました。ページをめくると、子供たちの歌と先生の子供たちを愛おしむ声が今も聞こえてきます。