授業NO.010
授 業:「パフォーマンス・わたしには夢がある」
対 象:富山県富山市立樫尾小学校 全校児童53名
日 時:2006年8月26日
人類の最も古い表現、パフォーマンスに挑戦します。体を動かし、大きな声を出し、みんなの前で自分の夢を宣言します。さて、みんなの心にどんなことが起きたのでしょうか?
講 師:堀 浩哉
(美術家/本学油画専攻教授)
8月26日
9:00〜9:25 :「夢について」(レクチャー)

 まず、堀先生は人間と動物についてお話をしてくれました。人間は絵を描くことができること、そしてもう一つは、夢を見ることができることが、動物とは違う点だと教えてくれました。

9:25〜10:10「夢を描く」
 みんなはどんな夢を持っているのでしょうか?まずA4のコピー用紙にえんぴつで書き出し、次に大きな画用紙にクレパスを使って、ひと文字ひと文字大きく、色んな色を使って、自分の夢を描いて表現します。描き終えた後、先生と一緒にパフォーマンスを練習しました。



10:10〜10:50「メーキャップ」
 
顔にメーキャップを施します。おしろいをベースに、赤・青・黄のドーランで、楽しく、面白く、時には歓声を上げながらメークをしました。いつもとはちょっぴり違う自分になると、自然に気持ちが高まってきます。



10:50〜11:40「パフォーマンス」 
 全員が整列し、いよいよパフォーマンスの開始です。先生のかけ声と、大きなドラムのドンッ、ドンッという音に合わせて、握りこぶしを振り上げ、足踏みをし、「あなたの〜夢は〜何ですか?」と大きな声で連呼します。この動きを繰り返す中、ひとりひとりが順番に、1台のカメラに向って走って行き、自分の夢を宣言していきます。全員の宣言が終わるまで10分間のパフォーマンスでした。児童にとって、みんなの前で夢を叫ぶことは、とても緊張したかもしれません。と同時に「言えた!」という達成感もあったのではないでしょうか。



13:00〜14:20「上映会と講評」
昼食後、みんながカメラの前で夢を宣言した映像を、大きなスクリーンで上映しました。パフォーマンスの達成感からか、メイクをした顔で喋っているのが面白かったのか、ひとりひとりの顔が映し出される度に、笑い声が飛び交いました。その後、先生と一緒にもう一度、画用紙に描いた自分の夢を、みんなの前で発表しました。


■おわりに
 最初は恥ずかしがっていた児童ですが、最後には全員が、みんなの前で自分の夢を話すことができました。大きな声で、体を使って、自分の夢を宣言したことで、「夢を忘れないこと」という大きなメッセージが心に残ったのではないでしょうか。初の遠方で、小学校の先生方、PTAの方、役場の方や現地在住の本学卒業生にサポートして頂き、みなさんのやさしい心が感じられる温かい授業となりました。
出前アート大学授業No.010
講師 堀 浩哉(美術家/本学油画専攻教授)

パフォーマンス・わたしには夢がある 

だれにでも夢はある。どんなにへんてこでも、どんなにささやかでも、夢は夢だ。夢がなければつまらない。でも、夢なんて、まじめに言うのはちょっと恥ずかしい。だから、心の中にだけ、ひっそりとしまっておく。でもね、本当は思いっきり大きな声で夢を叫んだほうが、夢は近づいてくるんだ。
心の中にひっそりじゃ、いつの間にか自分でも忘れてしまう。人の前で、体全体を使って、大きな声で叫んでしまえば、自分の脳がもう一度それをしっかりと受け止める。言葉にした夢が、脳と体に染み付くんだ。夢を忘れないこと。夢を記憶すること。それが、夢を本当にするための第一歩だ。
パフォーマンスというのは、体を使ってする表現のこと。それが、なぜダンスや演劇ではなく、美術なのか。じつは、美術というのは人類の最も古い表現なんだ。現在の人類が現れたばかりのころに、人は洞窟に絵を描いた。絵というものが、人類の最初の表現なんだ。
でも、残っているのは絵だけれど、松明を持って洞窟に入った人は、炎にゆらめく幻影(映像)や響き渡る音響(音楽)や動く自分たちの影(ダンス)など、すべてが混然一体となった表現を体験したんだ。後に、そこからダンスや音楽や詩やいろいろな表現が分かれていったけれど、何もかもが一緒で分かれていなかったころの、最初の表現の核が、絵だった。だから、今、美術は人類の最初のころの記憶にもどって、あらゆる表現が分離する前の状態を「美術」としてとりもどそうとしているのかもしれない。そのひとつが、パフォーマンスという表現だ。
まあそんなことは、どうでもいい。とにかく、体全体を使って、まず自分の夢を叫んでみよう!自分ひとりの夢を、みんなの中で。
そこから、夢への第一歩がはじまるんだ。