授業No.037
授 業:「映像であそぼう」
対 象:板橋区立常盤台小学校
日 時:2011年2月4日(金)
第37回目の授業は、板橋区立常盤台小学校で開催しました。対象は4年生3クラス94名です。講師は写真家の屋代敏博氏(1994年本学二部芸術学科卒業)。みんなで協力して被写体やカメラマンになることで映像の世界に親しみ、そこから伝わる面白い効果や時間感覚など、普段とは違う物事の見え方を体験しましょう。
講 師:屋代敏博 (写真家・美術作家)

2011.02.04 fri. 08:45〜09:35
「オリエンテーション、「94名で渦をつくる」」
授業の始まりはいつもとちょっと違いました。真っ赤な全身タイツに、大きな星形のサングラスを掛けた屋代先生が、跳び箱の中から登場!驚きと笑いに包まれながら、屋代先生の自己紹介と、後で行なう「彫刻になろう」の撮影方法「バレット撮影※」で撮った作品映像を鑑賞しました。
次はみんなで体を動かしましょう!顔の運動、腕をくるくる回したり、足踏みしたり、ジャンプしたり。体が温まったら、「渦をつくる」の撮影開始です。屋代先生の号令で、歩いたり、走ったり、電車になったり、
渦巻きになって回ったりしました。大勢の児童が歓声を上げながら元気に動き回る姿は、圧巻です。さあ、キャットウォークから撮影された写真が、どんな映像になるのか楽しみです。
バレット撮影※ =映画「マトリックス」などで使用された特殊効果で、被写体の周りにカメラを複数並べて全方向から撮影する方法




09:40〜10:25 1組、10:45〜11:30 2組、11:35〜12:20 3組
「彫刻になろう」
体育館の中心にカメラを12台円形に組んで、児童たちが中心で彫刻になり、セルフタイマーで一斉に撮影をします。3チームに分かれ、それぞれの役割を順番に担いました。
「彫刻」では、円の中心に入り、チームで彫刻になってポーズを決めます。小学校にあるフラフープや三角コーン、ボールなどを取り入れて、チームごとに独創性のある彫刻になりきります。
「撮影」では、一眼レフカメラのボタンを一斉に押して撮影をします。撮影する際は、全員で声を出して5,4,3,2,1とカウントダウンをし、みんなのタイミングを合わせ、シャッターを押します。
「風景」では、撮影をした際、被写体である彫刻の背後が写るため、作品の風景となって、それぞれに面白くポーズを決めて写ります。




13:40〜14:25
「94名で人をつくる」
昼食後、今度は3クラス全員で撮影です。児童はランドセルを背負って集まります。児童が「人がた」を作りながら、手を繋いでゾロゾロと歩いたり、その場でクルクル回ったり。みんなで歩調を合わせてかたちを作るのは、至難の業です。「人がた」の出っ張りやへこみの部分にスタッフがポイントとして立ち、一緒に歩いて児童を誘導しました。最後は一斉に校庭の隅に散って、撮影は終了です。




 

14:30〜15:15
「鑑賞会」
今回各撮影が終わるごとに、校長室で編集作業を行ない、映像作品に仕上げ、1〜3組全員で鑑賞を致しました。映像作品は「94名で渦をつくる」、「彫刻になろう」(3クラス各3作品)、「94名で人をつくる」の全11点です。「94名で渦をつくる」、「94名で人をつくる」はスローモード撮影をして被写体がブレているので、みんなの体がふわーっと溶け合い、「渦」や「人がた」がゆるやかに形を変えていく不思議な映像になっていました。「彫刻になろう」では、つぎつぎと視点が変わり、なんだか目が回ってしまいそう。最後に屋代先生から、みんなで一緒に同じ体験、時間を共有したことを大切にして欲しいとお話がありました。

 

 

 



■おわりに
一人ひとりの姿がひとつの固まりに、またバラバラになったり、まるで生き物のように見えたり…児童たちは、日常ではありえないことができてしまう映像表現の可能性を、楽しみながら感じてくれたのではないでしょうか。今回の作品は後日、板橋区立美術館で開催した「発信//板橋//2011 けしきをいきる」(期間:2月26日(土)〜3月27日(日)※東日本大震災のため13日迄で終了)の中で展示、発表されました。
機材協力:キヤノンマーケティングジャパン株式会社



練馬区美術館 展示風景

映像であそぼう
講 師:屋代敏博 (写真家・美術作家/1994年本学二部芸術学科卒業)


今回の授業「映像であそぼう」は板橋区立常盤台小学校の4年生101人を対象に6時間授業で組み立てた。当日の参加者は94人だったが、101人という数字が授業を考える上でのベースとなった。100という単位はPublicを表し、1という単位はPrivateを表す。つまり、「みんなと一緒に自分が生きている!!」。という単純だけど大切なことを再確認し、共同制作と自己表現を往復しながら頭ではなく身体を使ってそのことを実感できるような企画になるよう心がけた。ちょうど開催日が学期末だったので小学校4年生の時の想い出の1ページになればという願いもあった。写真や映像は記録するということが得意なメディアである。その特性をうまく活かし、たくさんの想い出の詰まった校舎を背景にして、全員が手を繋ぎ、汗を流して制作したという事実。時間と空間をみんなで共有したというひととき。大人になった時、何かの拍子にその記憶をふと蘇らせてくれたら本望である。