多摩美で培ってきた観察眼や審美眼が、長く愛されるブランドを支える力になる
ルイ・ヴィトン ジャパン株式会社

1854年にパリで旅行鞄専門店として創業したルイ・ヴィトンの日本法人で、ルイ・ヴィトン製品の輸入・販売・ケアサービス等の業務を取り扱っている。ルイ・ヴィトンは、トランクや鞄のみならず、プレタポルテ、シューズ、アクセサリー、フレグランス、時計などの幅広い製品を展開し、世界的な総合ラグジュアリーブランドとして発展。製品からサービスまで卓越性を追求し、環境保護や多様性、地域貢献など社会的責任に取り組んでいる。
https://jp.louisvuitton.com/jpn-jp/homepage
2025年9月更新
顧客志向のサービスに、学生時代から磨いてきたセンスや色彩感覚が活かされている

丸山達也さん
ルイ・ヴィトン ジャパン株式会社
クライアントケアサービス ケアサービスアトリエ
レゼクストラオーディネル アトリエマネージャー
私たちの部署ではケアサービスを担当しています。お客様が大切している製品を、より長く良い状態で使っていただけるように、メンテナンスやカスタマイズするサービスです。カスタマイズのなかでも、ルイ・ヴィトンの伝統的なサービス「パーソナライゼーション(トランクや鞄にイニシャルや家紋のようなマークを入れ、ご自身のものと認識できるようにするもの)」は重要で、私たちはこれを現代風にアレンジして行っています。
全世界にあるルイ・ヴィトンの中でも、私たちのようなサービスを行うアトリエを持っている国は、アメリカ、中国、そして本国のパリだけです。顧客志向を重視し、お客様のニーズに応えるだけでなく、それ以上のサービスを提供できるように業務にのぞんでいます。

多摩美卒業生の2人は、キャリアはまだ浅いですが、それぞれに活躍しています。
石橋さんはパーソナライズに特化した、ペインティングを担当しています。ペインティングでは、鞄に入れるイニシャルやマークの位置やバランスなどが重要になってくるため、非常にセンスが問われる業務です。
大野さんはメンテナンスの方でレザーケアを担当しています。レザーケアとは、お客様が長年使い込んだ鞄などの、色が剥げた部分や変色してしまった箇所を目立たないように補修することです。新品とは色が変わるため、周囲に合わせた色を作り、丁寧に描き直します。ルイ・ヴィトンは、さまざまなカラーリングをしているので、レザーケアでの色づくりは非常に重要ですが、これには優れた色彩感覚が必要で、一般の方にはなかなか難しいものです。
2人とも学生時代から培ってきたセンスや色彩感覚などを活かし、仕事を楽しんでいる印象です。
私たちはお客様の大切な品を預かりするので、責任感を持ち慎重に対応することが重要です。さらに、お客様の期待以上のサービスを提供するには、ニーズを見極めるリサーチ力と、技術向上への探究心が欠かせません。常にそういう姿勢で仕事に取り組んでいける人たちに、活躍してほしいと思っています。
お客様目線で想像力を働かせ、世界で1つだけのものをつくることに喜びを感じる

石橋麻衣さん
2022年|絵画学科 油画専攻卒
ルイ・ヴィトン ジャパン株式会社
クライアント ケアサービス ケアサービスアトリエ
ペインター
私は、トランクなどをパーソナライズするペインティングに携わっています。お客様の要望に応えて模様や絵を描いて、お客様だけの特別な品に仕上げる仕事です。トランクをどのように使いたいか、家のどこに置きたいかなども含めて、お客様の希望を詳細に伺い、相談しながらデザインを提案していきます。デザイン決定後に、トランクにペイントしてお客様にお渡しするという形です。
一番印象に残っているできごとは、イベントで、お客様の好みや配置を伺いながら提案したところ、「こんなに私のために考えてくれてうれしい」と感動して泣いてくださったことです。ペイントしてお渡しした後、お礼の手紙もいただき、この仕事をしていて本当によかったと感じました。
イベントでは、購入前のお客様にも好みに合わせたシミュレーションを見せ、そこから購入につながることがあります。買う体験そのものが思い出になり、価値を感じて喜んでもらえる瞬間に、この仕事の特別さと楽しさを感じます。 お客様の思い描くデザインをなかなかつかむことができず、話を聞きながらイメージを探って、繰り返し提案することもあります。大変だと感じることもありますが、最後にお渡しした品に満足して喜んでいただけると、とてもうれしく思います。

多摩美の油画科では、「美術とは何か?」という本質的な問いを考えたり、新しい形で作品を表現したりと、アートについて深く学ぶ機会がたくさんありました。そうした学びのなかで培った探究心や好奇心が、今の自分を支えています。
サウンドデザイン論の授業では、いろいろなジャンルのエンターテインメントに触れ、視野が広がりました。学びながら楽しい経験ができ、今の仕事にもつながっていると感じています。
お客様と接する際、ファッションや雰囲気から好みを分析・想像し、先回りしてデザインを提案できるのも、多摩美での経験のおかげです。そこで身につけた観察眼や洞察力が、今の仕事に役立っています。
学生時代は、思い立ったらすぐ行動することが大切です。少しでも興味を持った展示には足を運び、美しいと感じたものは自分の表現に取り入れてみると良いのではないでしょうか。多摩美では、さまざまなジャンルの特別講義や実習、イベントなどが企画されています。興味を持ったら迷わず参加し、チャンスを逃さず行動することで、視野が広がり、表現も豊かになると思います。
お客様の大切な製品に、自分の技術で唯一無二の価値を与え、より長く愛用される品へ

大野美森さん
2024年|絵画学科 日本画専攻卒
ルイ・ヴィトン ジャパン株式会社
クライアントケアサービス ケアサービスアトリエ
クラフツマン
私は、お客様の鞄などをお預かりして補修するレザーケアに携わっています。
お客様が愛用されてきた製品には、一つとして同じものはありません。変色の度合いや、色が剥げている範囲など状態はさまざまですから、その度に最適な手順を考えながら進めていきます。初めての素材や状態の製品には、先輩のアドバイスを受けつつ試行錯誤して取り組みますが、次の似たようなケースでは、そのときの手順を思い出し工夫を重ねながら仕上げられるようになってきました。自分の技術の成長を実感できることは、とてもおもしろいと感じます。
製品に向き合うときは、お客様がその鞄をどのように大事に使ってきたのか想像がふくらみ、その大切なものに携わっていることに喜びを感じます。同じ製品でも使い方や環境によって状態が悪くなっている場合もあるので、私たちは修理中に新たなダメージを与えないよう、手順を慎重に考える必要があります。リペア後の見た目がきれいなだけでなく、今後も安心して使えることが大切です。革にも栄養を与え、長く大切にしてもらえる仕上がりを心がけていますし、「この先もこの鞄と一緒に頑張っていきたいな」と思っていただけたら、とてもうれしいです。

日本画科の実習には、今の仕事につながる経験がたくさんありました。
まず、描きたいものをしっかり観察する力を培えたことです。レザーケアでは、傷の状態や剥がれている箇所を見極めなければ、適切な手順や方法をとることができないからです。
日本画の伝統的な絵具である岩絵具を扱った経験も大きかったです。岩絵具は水彩の絵具と異なり、絵具を盛っていく作業があります。ダメージのある部分の色を補うためには、顔料を盛っていく場合もあり、岩絵具を扱うなかで身につけた技術を活かせています。
また、伝統的な技術を学んだことも、今の仕事に通じていると思います。岩絵具だけでなく紙漉きも体験しましたが、長く受け継がれてきた技術に触れられたのは、とても貴重で楽しい経験でした。
学生時代には、できるだけ多くの「良いもの」を見て、審美眼を養ってほしいと思います。美術館に展示される作品はもちろん、自然の美しい景色や質の高い製品など、さまざまなものに触れることで、自分の表現の引き出しが増えていきます。そうした経験は、将来の仕事や創作活動につながる大切な力になるのではないでしょうか。


