古レールの構築

  古レールを再利用したホームの上家  

  建築史からも鉄道史からも外れた無名の建築

2019年1月現在、収録数352 調査済600以上。

まだまだあるがどんどん消えていく。

●レール造上家のバリエーション 

  日本各地の駅のホーム上家で見られた、古レール再利用による構造体は、現在H型鋼などの鉄骨造に置きかえられつつある。これらレールの上家は、よく見るとさまざまな構成パターンがあり、ひとつひとつをデザインしていた痕跡が見られる。 ホームの幅、積雪荷重などの条件が同じならホームの上屋は同じ形でもよいはず。しかし、全国にはさまざまなバリエーションがある。その変化は改良を重ねた結果というわけでもなさそうだ。かといって地方色を表現しているわけでもない。そこに個人的な好みが現れているところがおもしろい。

●ぎりぎりのデザイン

 レール造の上家には、表現だけのための部材や、無駄は許されない、ぎりぎりの材料の中で、しかし美しくあろうとするデザイン行為が存在する。それはデザイナーという職種の人ではなく、まさに詠み人知らずのデザインではあるが、そこには確実にデザインを楽しんでいた人たちが見えてくる。

●消えゆくレール造上家

 レールとして数十年、上家になってからさらに数十年、レールの製造刻印から百年以上たったものも多い。鉄は建材の中ではリサイクルの優等生だが、溶かして再生するにはそれなりのエネルギーが必要であり、レールがそのまま柱、梁になるのはもっとも効率よいリサイクルである。維持さえしっかりすれば老朽化とは無縁だが、現在、駅舎の橋上化や、線路の高架化という別の理由で消えつつある。レールの炭素含有量が増えてから簡単には曲がらなくなったこと、H型鋼のコストが下がったことなどから現在では作られることは無く、今後は減る一方である。だからといって今レール造を復活することは現実的ではないし、移築保存というのも限界がある。産業遺産としても注目度がまだ低いレールの上家をなんとか記録していきたい。

●記録 

 今、この「レールによる構築」を調べることによって、近代化の中の機能だけを求められた構造物の中で、それは現代の過剰な「デザイン」と比べるとはるかに控えめであるが、しかし純粋なデザインに出会うことができる。プラットホームには、駅名のサインだけでなく、広告、自販機、ベンチなど色彩が多い。レールでできていることに気づかない人も多い。レール造の美しさを強調するためにこのページの写真はモノクロとしてみた。