「ユーザーの目的からのデジタル画像コンテンツ検索の必要性とその操作方法」について、 既存の検索インターフェース(サーチエンジン、端末選択画面、等)を 「階層構造とユーザーの目的」という観点から進める。 デジタルコンテンツ検索の「目的を探すこと」について、ユーザーは「知るための目的」と「楽しむための目的」の2種類存在する。目的を持った場合に探し出したい情報(コンテンツ)については既存の製品にも定着しているが、目的を探し出すための検索システム、階層構造と操作手順については繁栄されていないと考えられる。 上記の問題に対する解決策として、 「知るための目的」を検索してゆく、カテゴリーから目的に辿り着く検索と「楽しむための目的」を検索してゆく、偶然性、関係性を利用した目的型検索の2系統を中心にインターフェースを構築 することによって、ユーザーがコンピューター上で操作する際に負担がかからない。という仮説をたてることができる。 情報検索について具体例として「デジタルCMライブラリー」を上げ、検索時に必要な情報、分類、手法を提案する。そこから得られたことをも とに、情報提示の必要性とその操作方法についてのべる。 1背景 1-1 デジタルコンテンツの状況 デジタルコンテンツを内包している物は、インターネットのように無秩序に増減するものとアーカイブのようにコンテンツ総数に限りがある物の2種類存在する。 デジタルコンテンツの増大化とそれを検索する端末の関係。90年代末の急速なインターネットに代表される情報デジタル化の一般化に伴い、文字情報、画像、映像、といった多様な形式のコンテンツと膨大なコンテンツを人々は扱うことができるようになった。コンテンツの全体量を把握することは時間とともに困難になってきている。これらのデジタルコンテンツを扱うための端末や電気製品は、インターネットをブラウズできるコンピュータが一般家庭に普及しCSチューナー、インターネットTV、情報機能携帯電話も出現している。それらの機器を使用しているユーザーは、膨大な量の中からユーザーが要求する画像のコンテンツを見つけるための操作を行わなくてはならない。 いったい膨大な量のコンテンツからどのようにして検索手法を設定していけばいいのであろうか? 1-2コンテンツ増大による「選ぶこと」の重要性 多種多様で膨大なコンテンツの中から特定のコンテンツを見つけだすために「選ぶ」という思考がユーザーに要求される。コンテンツを選択するためには情報をまとめて整理された情報を提示しなければならない。1から個人で全ての情報を認識して選択してゆくことは困難であり、そこにはなんらかの手法で選択しやすいような情報提示がなされている。ユーザーは端末を使用して選ぶ場合が殆どでGUIで選択してゆくことが多い。そこに提示された情報をもとに欲しい情報を知覚・認識して・決定する。そこで、コンテンツ決定手順において、ユーザーの「選び方」設計者の「選ばせ方」が重要視される。これらはユーザーの要求や経験の度合いに対して目的を効率的に達成させるめ、ある程度の情報の整理を行わなければならない。実空間(デジタル空間以外で扱われる情報)でも情報の整理は行われており、その代表的な例が新聞に掲載されている情報である。全世界の一日の1個人で処理できない程の出来事が重要度、必要性の有無、カテゴリーなどの情報の整理を行い提示され、読者は紙面から自分に必要とされる情報を選択し認知してゆく。デジタル環境においては、ユーザーの情報の投げかけに対し、情報を整理して提示、さらに要求すると、詳細情報が提示されるリアクティブな情報のやり取りが可能であり、この時に必要な情報提示の方法が重要であると考える。これらはYahooに代表される「検索」を主体として活動する団体が、ここ数年で情報デザインのみならず経済方面でも脚光を浴びていることから必要性、可能性を秘めていることが読み取れる。 1-3 全体量の把握とコンテンツ選択の複雑化 情報選択の現状を示す。インターネット上ではコンテンツの全体量は日々変化しているので把握することは不可能に近いのである。この場合、コンテンツを選択してゆく上で、目的に対して絞り込む検索が殆どである。目的とはユーザーの欲している最終的なものである。しかし、アーカイブやデジタルテレビなどのコンテンツに限りがある物は全体量を把握しているので、絞り込み検索以外のアプローチができると考えられる。前者はユーザーが目的を明確に持っている場合に非常に効率的に検索が可能である。目的が具体的であればある程膨大量の中から探し出すことは容易である。例えば、実際インターネット上でトヨタのカローラという自動車のカタログ文を要求したとする。この場合キーワードで検索してゆくことになるのであるが、「トヨタ 自動車 カタログ」と検索される項目が多い程正確に導き出すことが可能である。これが「カタログ」のみであると衣服や旅行等様々な種類のカタログについての情報が導きだされることになる。目的に辿り着く場合の要素が覆い程有効に探すことができる。キーワード入力が出来ない場合はカテゴリー化された「郡」の中から徐々に絞ってゆく手順を踏む。後者はキーワード検索の他に全体量を見せながら選択してゆく手法も可能である。 1-4 文字情報以外のコンテンツ 静止画像画像のみならず動画コンテンツも検索対象になりつつある。文字情報は紙メディアでも十分に扱えるが、デジタルコンテンツを扱うための端末や電気製品の大きな利点として「動画」を扱えることである。動画にはストーリーがあり、エンターテイメント性が十分にあるコンテンツである。 文字情報以外の静止画像や動画コンテンツを選択する場合、画像そのものを選択する場合と1度言語に置き換えて選択する手法の2通りある。以下文字情報以外の静止画像・動画コンテンツを画像コンテンツとする。画像を言語に変換して選択してゆく場合ユーザーは頭の中で相応しいと思われる要素を抽出し言語に変換する。1枚の画像は様々な要素があり見る人によって解釈も異なる。言語に置き換えられた画像コンテンツは設計者側がいかに多くの要素を仕掛けておけるかによって、検索しやすさに差異がでるといっていい。 例えば、映画1本にしてもタイトル、製作年月日、監督名、キャスト、時間などの検索要素を内包させる必要があり、設計者のイメージとユーザーのイメージが一致しなければ目的にたどり着けないことも多いと考える。 2問題意識 2-1.ユーザーの目的に伴う操作手順についての問題点 2章では画像コンテンツにポイントを絞りユーザーの目的と操作手順に対する問題点を述べる。 従来の絞り込み主体の検索ではカバーしきれない要求も生じてくると考える。 画面検索状況を理解するための「情報」の種類や質が適正でなければ、GUI検索環境を使用するユーザーは思考に負担がかかる場合が多い。ユーザーの要求に対して画面からの情報認識と目的到達のための操作手順のスムーズな関係性はなり得ないと考える。ユーザーの要求する対象もはじめから決まっている時もあれば、抽象的なイメージということもある。さらに利用する意図も映画など画像コンテンツといったエンターテーメント性が高まってくると「目的の情報を得るため」のほかに「欲求を満たすための目的を見つける」というユーザーの要求も広がりを見せている。目的はそこから得られる情報のみならず、得られたその時興味をもった情報で時間を満たすことが目的の場合も存在すると考えられる。 2-2「知るための目的」「楽しむための目的」 と検索方法の関係 インターネットやこれから普及するであろうデジタル放送などによる、膨大な量のコンテンツサービスを一般家庭でも楽しむことができるようになると、目的探究型の検索方法のみならず、目的探査型の「楽しむための目的」の場合にも対応した検索方法が必要であると考える。 ユーザーの要求は画像コンテンツを得るということが目的であり、目的の中にもいくつか種類が存在する。得た画像コンテンツをどのようにして利用するのかということで分類できる。 大きくわけて「知るための目的」と「楽しむための目的」がある。「知るための目的」は得たい情報がはっきりしておりピンポイントで検索でき、従来の絞り込み検索の手法を使用することで目的を達成することは容易である。得られた情報の利用法も「○○について調べたい」といった情報そのものがユーザーの欲求となっている。しかし「楽しむための目的」の場合、その情報がもとで発生する「イベント」がユーザーの欲求である場合も存在するのではないだろうか。 例えば漠然と「暇つぶしに面白いものがないかな?」と思いネットサーフしてみようと思ったことがあるでしょう。得たい情報がその時点では存在しないので、サーチエンジン等を頼りに「面白いもの」を求めるのである。しかし、これらのサーチエンジンはキーワードを直接入力するものや、カテゴリーを徐々に絞ってゆく絞り込み検索なので、キーワードが思い付かなかったり、他のカテゴリーと比べられなかったりして時間が過ぎてしまい「結局何も見つからないまま終わってしまった」ということを経験した方もいると思われる。本来ならば面白いものを見つけて楽しむ時間であるべきであるのに、そこに辿り着く以前の思考や操作に時間が費やされている。大量の画像コンテンツを楽しむことができるようになった現在、コンテンツを用意する側にもせっかくの資産をいかすため「知るための目的」のほかに「楽しむための目的」にも対応した手法が必要ではないのだろうか。検索はあくまでも目的を達成させる手段であり、目的の種類が増えるとそれに対応した手法が必要になると考える。目的探査型のための手法を付加することによって多くの情報を提供することができ、ユーザー側も新しい情報を得るトリガーとしてさらに身近なものになると考える。 具体的なアイディアとして「コンセプトで探す」手法、カテゴリー等の「枠」でくくらずにランダムに情報を提示するといった手法によって選択させることができるであろう。これらの手法は3章で詳しく述べる。 2-3目的探査型のための「トリガー」の提示 目的探査型のための手法としてユーザーに楽しんでもらえる「トリガー」を提示すべきである。 このようなユーザーの場合、はじめから「あいまい」なイメージしかもっておらず、情報提示する側にとってはユーザーにイメージが固まるのを待ってから探してもらうのではなく、目的イメージを持ってもらう情報を提示しなくてはならないと考える。 画像コンテンツの場合文章を読む時間よりも短い時間で状況を把握できると言う利点が存在する。ユーザーが選択してゆく際に画像コンテンツを「目的の画像」という扱いで情報提示するのではなく「目的イメージを持たせるための素材」として情報提示の扱いを変えることで、それを見て興味をもった画像からユーザーが自分の要求する方向性を持たせることができる「トリガー」としての役割を果たすことができる。プレビューなどは「目的イメージを持たせるための素材」といえるであろう。 3章 研究のアイディア 3-1 目的軸と操作行程軸からのメニュー構成 3章では問題点としている「ユーザーの目的」をポイントにデジタルCMライブラリーを具体例とし、目的画像までの操作手順、階層構造のアイデアを展開する。 画像コンテンツはコマーシャルフィルムとして100タイトルをユーザーが視聴出来る。文字入力は出来ないものとする。コマーシャルはおおむね15秒・30秒といった時間で構成されているのでコンテンツデータに差が出にくい。番組内容は「あるものを宣伝する」という名目で作られており、その中で商品、企業、出演キャストといったグルーピングがしやすい。このことから、検索させる際のグルーピングについて述べる。ユーザーの「目的」に対する検索方法の分類がしやすい。コマーシャルは「見たことある」といったユーザーが「あいまい」なイメージをもっている場合があるので、この部分から検索手順のアイディアを述べることができる。 収集したコンテンツの種類として商品別、企業別、放送年代別、1商品に対するシリーズ作である。これらを「ユーザーの目的」から、検索におけるメニュー構造のプライオリティーを考慮し操作手順を導きだす。 「知るための目的」と「楽しむための目的」について検索メニューも大きく2つに分類できると考える。前者は既存の絞り込み検索という手法で展開することができ、後者は2章の問題点で述べた目的探査型のための「トリガー」をもとにD.Aノーマンの「行為の7段階理論」を踏まえて展開し、表示手法として「偶然性」「関係性」に着目する。ユーザーが実質的に認識・入力するGUiも「目的までの操作手順の回数」という基本軸を設ける。選択入力のためのGUI表現やエリア定義もP.jhonsonの言う「一貫性・統一性」を持たせることにより、ユーザーの操作に対する思考の負担も軽減させられる。操作手順も目的到達までの操作回数をもとに回数の少ないものから配置すべきである。 あくまでも、ユーザーの「目的」を基本にしてデザインを行う。 3-2 目的ベースの検索(検索項目の種類) ここでは検索項目を「知るための目的」と「楽しむための目的」の2つに分類し、「知るための目的」として直接選択、カテゴリーを絞ってゆく検索の2種、「楽しむための目的」として関係性を探る検索、ランダム表示して偶然性から目的を見つける検索の計4種類を設定する。詳細はのちに詳しく記述する。 「知るための目的」の例として「△△年の夏に放送していた×社の○○チョコレートのCMが観たい」といったユーザーに明確なイメージがあり、コンテンツそのものが目的となっているもの。「楽しむための目的」の例として「なんか面白いCMないかなぁ」といったライブラリーを観て楽しむことが目的である。前者はD.Aノーマンの言っている「ゴール」が1本で明確に存在していると考えられるが、後者は「ゴール」が状況に応じてそのつど変化していると考えられる。「ライブラリーでも観てみよう」その時点では欲するコンテンツは決まっていない。次にコンテンツが表示され「これにしようか、あれにしようか」と思考してゴールをきめる。ピンポイントでコンテンツを欲しているのではなく、最終的なゴールに辿り着く「プロセス」自体もユーザーの目的範疇にあると考えられる。この種のユーザーはコンテンツを楽しむというよりも、時間を楽しむといっていい。このことから既存の絞り込み検索は1つの情報を得ることに関して、素早く目的コンテンツを得ることができるという面で適している。プロセス自体も目的になっている「楽しむための目的」ユーザーに対しては「いかにゴールまでを楽しませるか」も目的に辿り着く手順に含まなければならない要素と考える。 「知るための目的ユーザー」を目的探究型とし、「楽しむための目的ユーザー」を目的探査型とする。目的探究型として具体例で上げているCMライブラリーではキーボード入力を想定していないためカテゴリーからの絞り込みを行う。以下この項目を「カテゴリー検索」とする。今回使用していないが、デジタルBS放送などの多チャンネルコンテンツに対してはダイレクトにチャンネル入力が可能な場合もある。目的探査型は偶然性を用て画面内に一定のルールの上でコンテンツ表示順を乱数で振り分けた中から検索する「ランダム検索」。選択した画像コンテンツから関係性のあるものをピックアップする「riration検索」を提案する。 3-3検索操作にかかる時間とユーザーの目的 ユーザーの目的と操作手順の回数を時間軸上から考察する。ユーザーの思考に目的が明確にある場合、操作回数が多いことで、煩わしさを感じる場合が多いのである。逆に目的探査型は先に述べたように目的に辿り着くプロセスも内包しているので、操作回数や目的までの時間はさほど重要ではないと考えられる。実空間の人間の行動においても同じようなことが見受けられる。ショッピングを例にする。必要な買い物をする場合は目的の店に直行するのであるが、買う対象が決まっていない買い物、すなわち「ウインドウショッピング」がある。これはぶらぶらとそぞろ歩き興味のひいたものを購入したり、何も買わなかったりというものである。急いでぶらぶらしている人はおらず、それに要する時間は気にとまらないしその時間を楽しむことが重要である場合が多い。時間軸上に配置すると目的探究型と目的探査型は対極にあると考える。(図1)目的までのシステム構造、操作手順、操作回数を決定してゆく上で、目的探究型は目的探査型より操作手順を少なく設定すべきである。 操作時間軸と目的軸の2軸に各々のメニュー項目を配置(図2)すると 第1階層のメニュー項目の位置付けを決定する要素と成り得る。 3-4入力回数によるコンテンツ決定までの階層構造 実際のGUIの操作フローを設定する場合、各目的に見合った階層構造を設定すべきである。GUI表示画面上での選択・入力行為について技術的合理性からの階層設定ではなく、ユーザーのゴールと意図に対するサポートを行うべきである。D.Aノーマンの「デザインモデル」と「ユーザーの持つモデル」の一致をさせるためにも、デザイナーの「導きたい方向」とユーザーの「こうしたい」という視覚的な接点(システムイメージ)を構築する上で重要である。 システムイメージの出している情報とそれを認識したユーザーの意図が一致すると行為系列が明確に確立出来る。 コンテンツの選択行為を行う場合、複数のタスクを1画面上に設定すべきか、1画面1タスクなのか考慮するのか、実際にプロトタイプを製作してみることが重要である。入力操作に燗するルールを決定する場合、理論上合理的に構築してしまうことがある。数種類の異なったのタスクがあり、目的の結果は全て異なるものであるがすべてのタスクにXという条件を入力する項目があると仮定する。(図3)Xには3項目の入力があり1画面上にすべてを表示するのか、さらに階層を作るのか、順番をかえるのか等をユーザーの思考ベースに考えるべきである。ここで(図3)の上では各々説明をつけて入力項目も独立しているものが解りやすそうだが、これらのタスクに対しての実際の入力は時間の経過と画面遷移がかかわってくる。実際にプロトタイプを製作することによって一連の設計した入力行為の差異や問題点が生じる。プロトタイプのテストを繰り返し、抽出された入力手順に関する問題点を改善することでユーザーの行為系列生成を導きやすくすることができると考える。 3-5目的探査型検索(ランダム検索・関係性検索) 目的探査型検索を設定する場合、いかにユーザーにゴールを描かせる要素を置くか、ユーザーの選ぶゴールの幅を広げられるかがポイントである。ユーザーが興味を持ちゴールを導くためのイベントとして「偶然性」「関係性」を用いる。画像コンテンツがランダムに表示され、偶然表示されたものの中から興味を抱かせることが可能なのであるり、選択した一つの画像コンテンツからの関係性を示すことでユーザーの意図していなかった画像コンテンツを知ることも可能である。 ランダム検索 偶然性を利用したコンテンツ表示を手法とすることでユーザーにゴール形成のトリガーにでき、ゴールに至までのプロセスも楽しむことができる。目的探査型ユーザーの思考は画像デジタルCMライブラリー上の最終的なゴールを持っておらず、それ以前の思考である「CMライブラリーを観てみよう」といったように、どのコンテンツを観てみたいのかはっきりとしたゴールは形成されていない。「検索する」といったものをD.A.ノーマンが言う「行為」につなげるためには、ゴールはすべきことの特定な表現に変換されなければならない。これを「意図」と言っている。意図は目的イメージを持たせるための素材具体例で示すと、画像コンテンツプレビュー等の情報からユーザーの興味をひいたものによってつくり出される。その時点で初めてユーザーにゴールが形成される。 検索のモチーフは「目的イメージを持たせるための素材」として実際の画像コンテンツのプレビュー・サムネイルを使用することで、それを見て興味をもった画像からユーザーが自分の要求する方向性を持たせることができる「トリガー」としての役割を果たすことができる。 目的イメージを持たせるための素材となる100画像コンテンツプレビューを1画面内に数種類写し出し、それらをランダムに表示してゆくことによって「目的を見つけるトリガー」を複合的に存在させることができる。 1コンテンツを順番ににランダム表示でも良いが、複数表示することによって認識した画像コンテンツプレビューを「比較」でき、ゴール形成のトリガーを多く内包させることが可能である。これによってユーザーのゴール形成に広がりを持たせることができる。 ランダム検索には現時点で明確なゴールを持たないユーザーの「ゴールを見つけるため」の素材に対する期待をうまく利用出来る。カテゴリー化された表示であると「ある特定の範疇」でしかなく自動車ならその中で見つけることしか出来ない。ましては、絞り込みはもともと最終的な明確イメージを持たないユーザーに対して酷であり、「行為」形成が出来ないと考えられる。 関係性検索 関係性を利用することによるユーザーに対しての方向性の提示。ユーザーが選択した画像コンテンツをもとに附随した情報(文字情報。例えば、決められたルールの元で放送年月日、会社・団体名、商品カテゴリー等の文字情報をあらかじめ画像コンテンツに組み込んでおく)をキーワードにして関係性の見られるものを、選択画面上に「目的イメージを持たせるための素材」として表示する。”○○チョコレート”のCMにユーザーが興味を持ち関係性を見てみたいとする。一般的なカテゴリー検索ではユーザーの思考の段階で関係性を考慮した上での入力になり、ユーザーの思い浮かべる関係性以外のものは表示されないので、思いがけない発見をする確率は低くなると考えられる。関係性を利用した検索の手法をとることによって、ユーザーの意図していない関係性も表示させることが可能(図4)であると考えられる。この表示はユーザーのもっているゴールをもとに、広がりを持たせることができる。そこには「関係コンテンツとの比較」やユーザーの想像にはない「新しい発見」が含まれているのである。絞り込み検索ではゴールに辿り着くための機械的な入力作業であるのに対し、関係性検索においては、最終的なゴールに辿り着く行までの入力行為を含んだプロセスも楽しめる。 3-6操作入力回数の可視化 GUIにおける表示ルールとして入力時操作回数をもとに配置する手法を説明する。ユーザーの持つゴールの鮮明さからの操作フローを設定すべきである。観たいコンテンツがあらかじめ決まっている場合に目的までの操作手順が多い程ユーザーは操作に不満を感じる。目的コンテンツに辿り着くため機械的な入力作業になってしまうためである。入力項目等も1つづつ画面を切替えながら入力させると確実性は上がるのであるが、行為自体の入力操作にストレスを感じることも忘れてはいけない。この部分は紙の上で手順を決定してゆくよりも、実際のプロトタイプを製作して決定してゆく方が望ましいと考えられる。デザインを行ってゆく上で画面遷移などは、操作フローなどによりマクロ的に見ることができる。しかし、入力行為は時間の流れを組むので紙の上では問題点を見落としてしまうことがある。プロトタイピングについてはP.ジョンソンのヒューマンインターフェースの設計方法で、実行可能なプロトタイピングと実行不可能なプロトタイピングについて述べられている。入力行為の設定方法を決定するために、例えば、名前-住所-電話番号の入力タスクが存在するとして、1画面1項目の入力を行う場合、操作フロー図で見る限り確実性があり、手順もわかりやすいが、実際のプロトタイプモデルのシュミレーションでは全ての入力を終えるまで、3回画面遷移することで入力作業も、画面遷移のための入力行為を行わなければならないことが解る。よって、必然的に1画面ですべての入力を行うよりも回数が増え、操作の煩わしさを感じる。 4「使用例」 4-1 デジタル画像コンテンツ検索の提案(CMライブラリーのシュミレーションモデル) 知るための目的「目的探究型」と楽しむための目的「目的達探査型」を利用した検索の提案。3章で述べた目的達探査型の検索、を用いたCMライブラリー検索を提案する。(図5) 提案デザインの使い方と目的 Macintosh上で使用するCD-ROMCMライブラリー。検索項目に「カテゴリー検索」「放送時間軸検索」「ザッピング検索」「関係性検索」「ランダム検索」今後の展開として「SURF」を設ける。 コンテンツ CM画像100タイトルを使用。放送年、商品などは、なるべく片寄りなく収集した。 4-2各検索項目の説明 「カテゴリー検索」 ユーザーが「○×商品のコマーシャルを見たい」「○○さんが出演しているのコマーシャルを見たい」といったあらかじめ目的の最終コンテンツ画像を描いているユーザーに適している。 「会社」「商品グループ」「出演キャスト」といったユーザーの目的イメージを確かなものに定着させやすい項目を使用する。これらは紙メディアのカテゴリー分けを利用する方がユーザーにとっても、今まである知識と経験を利用しやすいので検索に対する思考に負担がかからないと考えられる。全項目1覧も必要であると考えられるが、コンテンツが多くなる程最終的な情報を表示することは難しい。インターネットのWEBサイトなどは計り知れない量であり日々変化しており、キーワード検索をしてもHit項目が1000を越えてしまうことが多々ある。結局1000Hitでも全てを見てから決定するユーザーはごく少数ではないかと思われる。よって、ピンポイントに情報を取得する場合もカテゴリーから絞り込む手法を使用する。 「放送時間軸検索」 放送された順に時間軸上に配置して検索する。この検索は、全コンテンツを1本の軸上に配置しているのでユーザー側も一定のルールをもって検索出来ると考える。今回は時間軸上に配置したが、軸の項目を変えることによって臨機応変に対応出来ると考えられる。しかし、項目は全てのコンテンツに含まれるものでなければならず、こぼれ落ちるコンテンツ存在するとカテゴリー検索の方が妥当であると考えられる。 ピンポイントな絞り込みではなく、「マクロ的な流れ」を認識しながらの検索を行うことができる。 具体的に説明する。まず、100コンテンツを1軸上に表現し、検索することはユーザーの負担になるので、10年ごとに階層を設け年代を選択する。次に軸上に並べられたコンテンツをスクロールさせて目的のものを決定する。 「ザッピング検索」 1画面に1 コンテンツを順に表示してゆく手法。テレビのザッピングがそれである。コンテンツの表示順は様々に存在しているので設計者側で設定する。この場合コンテンツデーターの追加も考慮した表示順を決定することが望ましい。操作に関してコンテンツの総数によっては、10タイトルづつ頭出しができる等のショートカットも考えるべきである。これを行わなければ、コンテンツ順の最後の方などユーザーが操作に疲れを感じて最後まで見ないことがある。 具体的に説明する。1画面に1コンテンツを配置して「次ぎボタン」「戻るボタン」で選択してゆく。10コンテンツづつのはじめに移動できるショートカットを設ける。 「関係性検索」 ユーザーが選択した画像コンテンツをもとに、関係性のあるコンテンツをさらに表示する。そこからユーザーが新しいゴールを見つけてゆくことができる。カテゴリー検索では決まった「郡」の中のみの関係性(車、化粧品、キャストなどの狭いグループ)であるから「比較」する土台もおのずと狭められる。しかし、これらの手法を使用することでカテゴリー検索にはない「比較」を行うことができる。例えば、あるキャストが出演しているCMがあり、自分の知っているCMを選択する。そこから画像コンテンツに付加されている情報で関係性が表示され、その中から閲覧してみたい画像コンテンツを観ることができる。この場合ユーザーの思考にはなかった関係性も表示される場合があるので、「新しく発見出来るおもしろさ」と言うものも要素として含まれる。また、商品名、キャストなど具体的にCM画像コンテンツを思い出せない場合、ユーザーが覚えている他のCMから関係性で検索することによって本来の目的コンテンツを見つけだすことも可能である。「○○が出演してるお茶のコマーシャルだったような....」といった場合にユーザーがキーワードとして持っている○○という情報と、お茶という情報で近いCMを元に関係性で検索するといったことも可能である。 「ランダム検索」 1画面に数コンテンツづつランダムに表示する手法。この場合前章でも述べているように、偶然性を利用した検索手法である。目的探査型ユーザーに有効であり、その時々によって比較や発見が異なり様々なトリガーを内包している。ランダム表示なので設計者の意図しない要素もあり得るのではないかと考える。 ランダム表示を取り入れる場合それを取り巻く表示のルールやGUIは、他の検索メニューより慎重に行うべきである。例えば、毎回異なった画面表示がされるため、総ページ数の何ページ目であるのかという表記や配置する位置など、曖昧なレイアウト/インターフェースではなく、ユーザーにランダム表示であるということを認識させるデザインを行わなければならない。作為的に適当に見えるものや曖昧なもの程、きっちりと煮詰めたデザインを行わなければユーザーにはランダム表示という意図すら伝わらないだろう。 「SURF」的検索 今後の展開として「SURF」を提案する。これは CD-ROMなどのコンテンツ総数が決まっているものに有効であると考えられる。内包しているコンテンツのみならず関係している情報をネットワークにつなげてブラウザで表示する。CD-ROM意外の情報が手に入るのでユーザーの検索に広がりを持たせることができるのではないかと考える。画像情報に限らず文字情報、さらに詳しい情報なども入手出来ると考えられ、これら内包しているコンテンツは「情報のテンプレート」として扱われるべきである。詳しくは6章で述べる。コンテンツ内でも「SURF」は行うことができ、コンテンツ閲覧毎に関係性を辿ってみてゆくことができ、関係性検索のそれに近い。ユーザーの持つ目的のベクトルが他の検索は1方向または単品で完結しているが、これははじめと終わりの関係性が全く無くても良いことになる。 4-3操作方法 キーボード入力不可、カーソルで移動、1ボタンクリックで選択/決定/取り消し。これらは、全てのメニューで、文字入力を不可能にするなどの条件を増やすことによる操作手順の均等化をは計った。 D.A.ノーマンの言う「フィードバックの原則」の上で基本的に選択対象上にカーソルが乗せられると、アクションがおこる。文字色の反転、動き、音が出る、等のリアクションがおこる。GUIである以上物質的なフィードバックを得ることは出来ないので、視覚的、聴覚的なフィードバックの手法を行う。 検索を実行する上で、ユーザーが混乱を招いた場合に初期状態に戻れるボタン、一つ前の状態に戻れるボタンを配置する。フォントサイズや色も各操作項目に添ったルール付けが必要である。 5まとめ 大量のデジタルコンテンツ検索が可能になり、内包するコンテンツも、調べものなどのはじめから知りたい情報があるテキスト情報から、映画等の「観て楽しむ」ものまで多種多様になった。検索という「探す」という行為自体も「知るための目的」のみならず、コンテンツ自体を探すことも目的の中に含まれる「楽しむための目的」も探すようになった。 実際にインターネットに対するアンケートを実施したこともあり、20代前半の女性も最近ではインターネットを「調べるというよりも探す」楽しみの一つとしていることが解り、コンピューターが身近なものになっていくということは、操作性やシステム構成ももっと敷居の低いものでなければならない。 文字情報ではないデジタル画像コンテンツ検索において「探す・調べる」ということは、現在の検索システムの一般的なキーワードによる絞り込み検索だけでは対応しきれない。ユーザーは画像を一度頭の中で文字に置き換えて検索していかなければならず、思考に負荷がかかる。そこで、「検索のシステム」もユーザーがどういった目的で検索を行うのかという観点で展開すべきであり、目的探査型ユーザーのための「偶然性・関係性」をエレメントとした目的ベースの検索手法の提案である。 もともとある情報に対しての検索(最終的に知りたい情報が解っている検索)では既存のインターフェースで十分サポート出来るが、ユーザーに最終的に知りたい情報が初めは持っていない場合の検索(なにか面白いものないかなぁ的検索)には探す術が見当たらない。画像コンテンツの中には娯楽映画などのエンターテイメント性が高いものもこれから増加してゆくと思われ、それに伴い、検索するユーザーの意識も「これを探す」という意識の他に「気軽に見つける」というような意識を持った者も増える。ランダムに表示した中から選択してゆく手法や関係性を利用した手法はユーザーの思いもよらない発見を体験させることができる。目的探査型ユーザーの最終的なデジタル画像コンテンツを思考に確立させる「トリガー」をこれらの手法によって数多く内包させることができた。おのずとユーザーが知覚/入力する部分であるインターフェースデザインも、目的を探すユーザーのためにそこに辿り着くプロセスも考慮していかなければならなかった。 6今後に向けて 今後デジタル画像コンテンツが増えてくると、このような目的探査型ユーザーのための目的ベースの検索がさらに必要になるであろう。4章で述べた「SURF」であるが、ネットサーフは現在インターネット上を渡り歩くのである。しかし、データーベースをあらかじめユーザーの手元に存在させて、内包しているコンテンツを「目的を見つけるためのトリガー」としてさらにネットワークを利用してコンテンツを取り巻く情報環境に広がりを持たせることができると考える。 新しい情報をネットワークから引き出すことも可能になると思われる。内包しているコンテンツのみならず関係している情報をネットワークにつなげてブラウザで表示する。CD-ROM以外の情報が手に入るのでユーザーの検索に広がりを持たせることができるのではないかと考える。 今後、コンテンツも増大することで検索がさらに重要になり、情報自体を掲載していたアーカイブ等も「情報のテンプレート」として利用することで、さらにユーザーの要求を満たし、その先の思いもよらないユーザーの発見に繋がるであろう。 参考文献 『行動・文化とデザイン』 清水忠男、鹿島出版、1991 『誰のためのデザイン?』 D.A.Norman著、野島久雄 訳、新曜社、1990 『ヒューマンインターフェースの設計方法』 P.Johnson著、佐藤啓一、宮井均、須永剛司、原田昭 訳、マグロウヒル出版、1994