岡村吉右衛門 蝦夷絵から十二星座まで
会期:2010年1月16日[土]→ 2月28日[日]
岡村吉右衛門(1916〜2002)は、日本の民芸運動の創始者柳宗悦、そして染色工芸家の芹沢_介に師事し、その後独自の活動と作品を展開した日本を代表する染色家であり、染色技法研究の第一人者です。活動初期は民芸運動に参画するかたわら、その卓越した技術実践に基づき染色に関するさまざまな領域についての研究や調査を行いました。その業績は、人類の染色技術や工芸文化についての貴重な資料であり、染色にかける情熱と造詣の深さを物語るものです。研究成果の著述や講義の合間をぬって、世界各地(沖縄、北海道をはじめ、中国、インド、東南アジア、中南米、アフリカなど)でフィールドワークを行い、染色はもとより、繊維、製紙、陶磁器、民具等の工芸研究を続けました。ところが、民芸運動家や工芸研究家としての高い評価を得た一方で、これらの研究が活かされた岡村吉右衛門の染色作品は、公表される機会に恵まれず、いつのまにか「幻の作家」となっていました。
岡村吉右衛門の作家としての後半生は、北海道のアイヌ民族の伝統的な文化に根ざした、蝦夷絵の制作に注がれました。徹底したフィールドワークによる研究を基に、独自の染色技法である「型染版画」のスタイルを完成させ、多くの作品が制作されました。そこに描かれたアイヌの人々の習俗や文様、呪符、そして鳥や獣、魚、鯨、樹木、草花など、さまざまな動植物をとりいれた自然のモチーフは、自然の恵みとして昇華されていった工芸技法、素材と相まって、素晴らしい「蝦夷絵」の世界を形成しています。そして岡村吉右衛門が晩年に到達した境地が、型染版画による星座シリーズです。星座として描かれる、古今東西の神話的、自然信仰的モチーフの数々は、地域や時代を超越した岡村芸術の集大成といえる作品です。岡村吉右衛門は残念ながら星座シリーズを手がけ始めた直後、病床に伏し闘病生活に入り、2002年惜しまれながら不帰の人となりました。今回は、アイヌ文化の貴重な語り手となる蝦夷絵を中心に、初期の文字絵から最晩年の十二星座シリーズまでの型染版画作品約100点と、作品制作のための下絵やスケッチ、膨大なフィールドワークのノートや資料群、そして貴重な私家本や原画類を一堂に展示し、孤高の鬼才、岡村吉右衛門の業績を振り返ります。
関連イベント
■ 講演会
「フィールドワークの視点から ―岡村吉右衛門の民俗文化へのまなざし」
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日 時
1月16日(土) 14:00〜16:00
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講 師
小島美子(国立歴史民俗博物館名誉教授)
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会 場
多摩美術大学美術館1F多目的室
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定 員
100名 参加無料(入館料が必要になります)
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主 催
多摩美術大学美術館
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協 力
紙の博物館
フリーダ・ジャポン
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休館日
火曜日
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入館料
一般 300円(200円)
大・高校生 200円(100円)
※障がい者および付添者、中学生以下は無料
※( )内は20名以上の団体割引料金
カタログ情報 岡村吉右衛門 蝦夷絵から十二星座まで
価格:1500円
2010年発行、26.0×21.0cm/104ページ
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