塩田千春教授が「国際交流基金賞」を受賞、3/29に記念講演会
大学院美術研究科エクスペリメンタル・ワークショップ(EWS)の塩田千春教授が、令和6(2024)年度の「国際交流基金賞」を受賞しました。
同賞は、1973年創設以来、学術・芸術等の文化活動を通じ、国際相互理解に貢献した個人・団体を顕彰する賞であり、総合的に国際文化交流を実施する日本で唯一の専門機関である独立行政法人国際交流基金(The Japan Foundation、JF)より贈られます。
第51回となる今回は、国内外の有識者および一般公募により推薦された60件の中から、3件の受賞が決定し、そのうちの1件に塩田教授が選ばれました。
授賞理由
塩田千春氏は、ベルリンを拠点として国際的に活躍する美術作家である。
発表当初から一貫して「生と死」といった根源的なテーマと向き合いながら表現を深めてきた。ドイツに留学していた1997年、自らの身体を一つの素材として泥と格闘した作品が作家としての起点となった。2002年スイスのルツェルン美術館で発表した《眠っている間に》は、暗転する程に黒い糸が編み込まれた空間に病院用ベッド30台が置かれた作品で、作家が眠るパフォーマンスを行うなど「生と死」を直接的に表した。また、壁崩壊8年後にベルリンを訪れた塩田氏は、解体されたビルなどから集めた「窓」を壁状に高く積み上げた作品《内と外》(2008)を制作した。あちら側とこちら側とに隔たりながらも互いを見つめることができるその構造は、意見を違えてきた人類の歴史や物語を思い起こさせる。
このような強いメッセージを放つインスタレーション作品によって、ベルリン芸術大学在学中の1999年からドイツの各都市で発表を開始し、ヨーロッパ、アメリカ、アジアと活動の場を次第に広げていった。国際展へも2004年のセビリア現代美術ビエンナーレ以降、毎年のように参画している。中でも、2015年ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展日本館で発表した作品《掌の鍵》は、空間を覆い尽くすかのような圧倒的な量の赤い糸に、世界中の人々から募った鍵が結ばれて構成された。その火焔が噴き出したかのような強烈な視覚的インパクトと共に、18万本の鍵に込められた人々の願いや思いといった記憶が一体化した見事な表現は多くの人々を魅了した。
日本から単身ベルリンに渡りドイツ在住の日本人作家として揺るぎない地位を獲得してきた塩田氏による全世界を舞台とした活動そのものが国際交流の実践であり、同時に女性の国際的な活躍を促す大きな原動力ともなった。塩田氏は、このような顕著な業績とともに、今後益々の活躍が期待され、国際交流基金賞にふさわしい。
(国際交流基金WEBサイトより)
受賞記念講演会「糸のつなぎ目」開催
受賞を記念して、塩田教授と森美術館館長の片岡真実氏による対談イベント「糸のつなぎ目」が開催されます。
日時 | 2025年3月29日(土)15:00~16:30(14:30開場) |
会場 | スパイラルホール(東京都港区南青山5-6-23) |
定員 | 200名(お申込み受付を終了いたしました) |
主催 | 独立行政法人 国際交流基金 |


大学院美術研究科 エクスペリメンタル・ワークショップ(EWS)
エクスペリメンタル・ワークショップ(EWS)は、2020年度より、大学院生対象の横断型プログラムです。「実験」という語を冠したこの試みは、学科や専攻の枠組みを超えて、学生が主体的に取り組む、国際的かつ継続的な複合プロジェクトで、本学大学院美術研究科における実験的な学びの場です。従来の美術の枠を超え、多様なメディアや領域を横断しながら、新たな表現の可能性を探求することを目的としています。