多摩美術大学90周年記念誌|多摩美術大学
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…──1936年5月,「技術の獲得と理論の確立」を提唱し,多摩帝国美術学校図案科会によ24 . 25『デセグノ』り創刊.図案科学生たちの自治的な研究活動として1939年12月までに全10冊刊行.会員外にも広く執筆者を募り,図案研究雑誌として注目された.永い図案生活に於て何を私が成し得たかと云ふことに思ひ及ぶ時、転た、忸怩たらざるを得ないことであつて、尚一層の努力を私の余生に期待する勇気を有するものであるが、余の半面に於て、私の意志の後継者の多くを後世に貽さなければならぬ欲望を持つものでもある。それは私の技法の伝達でも思想の継続でもない。私の意力の継承を意味し、私の一生に成し遂げ得なかつた図案芸術への発展向上を意味することであつて、幸にも私の周囲には純なる多くの若者が控へてゐる。殊に今や多摩帝国美術学校関係者の溌剌たる意気を以て、私のこの意力を後世へ継承する約束については誰一人として異存を称へるものは無いであらうことを私は私の誇りとして信じ、こゝに残された私の使命が完成するであらう喜びを深く感ずる次第である。尽きざる思ひを残し乍らここらで筆を擱くことにしよう。杉浦非水「図案生活三十年の回顧」より抜粋技法や思想の継承を越えて,図案芸術の発展にかける「意力」の継承を使命とする喜びについて記している.この非水の教育理念を象徴する「意力」という言葉が,1995年に設定したユニバーシティ・コンセプト「自由と意力」につながっている.『デセグノ』創刊号

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