8中村 理事長から、サーキュラー・オフィスの話を聴いたときに、この2人のメンバーだったら絶対おもしろいことができるという直感があって、中身も問わずに「やります」と言いました。以降、1年半以上議論しながら内容について考えてきました。ライフセンタードで、美の刷新につなげていく中村 サーキュラー・オフィスは、「LIFE CENTERED CREATIVITY」を掲げています。これまで、それがすべてとは言わないですが、「ライフセンタード」ではないクリエイティビティを称賛してきたのが20世紀の大きな側面でした。改めてこの2023年に、「ライフセンタード」と言い直すことの重要性があると思います。一方で、それが美の刷新につながるといいというのを最初の時期に話していました。石川 美大という立場から、何を変えていけば世の中がより新しい形になるんだろうかと考えた結果、生活の中で豊かさや普通がどのように新たになるかが大事で、その先に新しい豊かさや新しい暮らしの普通があってもいいんじゃないかと思っています。自分が使っているもののケアや、長く使おうとすることもあると思うんですが、それを美大から始めることの意味が大きいと思います。美大の人が何かを生み出すときの意識として再定義する役割を担う、担えるんじゃないかという期待を込めて、美の刷新を探究できないかと考えてきました。大貫 中村さんが、「それをあえてもう一度宣言してみる」というのが貴重な言葉で、前職の不動産デベロッパーでも、もちろん人の暮らしが中心にあるっていうのは当たり前だと思い込んでいるんですけど、改めてそのライフセンタードとは何か、あるいは美しさとは何かを問われると、内省的にならざるを得ません。そんな問いかけの力を持っていて、今、あるいはそれを未来に向けて始めるという意味で、非常に力強い取り組みだと感じています。中村 サーキュラー・オフィスは、「育成」「研究」「実践」の3本柱で考えています。育成でいうと、私は2008年に初めて多摩美術大学に来たんですよね。他の学科を見に行ったり聞きに行ったりしていると、けっこう衝撃で、こんなに多様な授業の形態があるのかと驚きました。枠組みに囚われず、教育のあり方を考えてみたいし、実際にやってみたいと思っているのが第一歩です。協力してもらっている企業だったり行政の方に入ってきてもらって、一緒に探求できたりすると素敵だなと思っています。 研究は、これからどんどんテーマが増えていくと思いますが、アートと循環の関係の中で様々なテーマを設定して研究をしていきます。デザインと循環は、先ほど永井さんがお話していたようにすでに蓄積もありますので、そういう中で様々な領域設定をして研究していきます。 循環の仕組みを作るだけではなく、もちろん理念も今考えて作っているんですけれども、人類史を見渡すと、思想の言葉が出てくるのは後からなんです美大の人が何かを生み出すときの意識として再定義する役割を担う(石川)
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