多摩美術大学|サーキュラー・オフィス 2023 年度 活動報告書
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10いう文脈で、ルーツと「作る人間」としてのお話をさせていただきます。 僕は東京出身で、2000年から東京の美術予備校に通っていました。そこから、中国の中央美術学院に進学し、3年ほど学んだ後、ニューヨークに渡りました。「中国に流れてくるお金やアートの源流を見たい」という欲求に駆られたんです。その後は、「作家の創造性がどこから生まれて、そしてどこに流れていくのか」が気になり、当時作家が集まっていたドイツのベルリンに移動しました。中村 なぜ中国の美術大学を選んだのですか?齊藤 実は高校を中退して、「少し早めに美術の道に入ろう」と決めていたんです。でも、美術予備校で学べば学ぶほど、「美術って、ルールが多い業界だな」とうんざりしてしまって。僕が学びたいのは、「社会の中でどう行動して、どう力を発揮していけるのか」開催日:2023年11月5日(日)レクチャーシリーズ 第1回社会の価値をどう循環させていくか中村 記念すべき1回目は、合作株式会社の齊藤智彦さんにお越しいただきました。齊藤さんは現在の取り組みからはおよそ想像できないようなルーツをお持ちですよね。齊藤 現在は、鹿児島県大崎町におけるリサイクルの運営をお手伝いしています。大崎町は「リサイクル率日本一」を14回受賞している、環境分野の「循環」が注目を集めている自治体です。日本や海外からも多数の視察が訪れています。とはいえ僕の専門は、資源循環よりも、「その価値をどう循環させていくか」。資源だけではなく、「社会的なところをつなげていく」という意味の循環だと考えています。 今回は「自分がここまで何を作ってきたのか」と多摩美術大学リベラルアーツセンター/大学院 教授合作株式会社 代表取締役中村 寛齊藤智彦本来、「循環」とは資源に限らず、特定の対象が一回りして元の場所や状態に帰り、それを繰り返す様を示す言葉です。政策形成や循環型社会構築を表現の場として、循環に関する様々な活動を行ってきた齊藤智彦さん。中村寛教授とともに、齊藤さんのルーツと思考を掘り下げていきます。現代社会において、アートやデザインの価値をどのように社会に循環させるのか?

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