30すことができました。狩猟したものでは保存が効かないわけで、穀物を発明したことによって保存できるようになって、貯蓄できるようになりました。貯蓄できるようになると、例えば日本に寒い冬が来たとしても、それを食べることで子供も大人もあまり死なずに冬を乗り切ることができるようになりました。この繰り返しで、人口がだんだん増えてきたわけですよね。 なので、テレビの世界から農業に行ってまず分かったのが、「なるほど。こうやって人類は自然を破壊してきたのか」っていうことで、それはネガティブな意味だけではないと思うんですけどね。食の豊かさは、常に環境収奪とのトレードオフなので、うまいものを食べようと思ったらその分、森を切り開く必要があるということです。としても多分100年単位では無理なんじゃないかなと思います。 おっしゃった通り、現状、レタスやせいぜいイチゴくらいなんですよ。だから、日本では必要ない技術というか、特定の分野においては価値を生み出すかもしれないので言い過ぎな部分もあるかもしれませんが、それが食の根幹を担うようなことはありません。全体の中で、ごく一部の話として存在すると理解しています。大橋 確かに、工場を建ててこんなふうに野菜をつくると、栄養価も安定するということで、これができれば大丈夫という感覚になりかけていますよね。小野 今、日本の我々が食べているものの99.9%は輸入した肥料でつくられてます。だから、本来で言うと、我々はこんなにたくさんいるわけだから、うんちとか死体を肥料にした方がいいんですよ。しかし、文化的だったり、我々のあり方の中で否定されてきています。我々の選択の中で、わざわざエネルギーを輸入して大量に投下して、肥料をつくるっていうことで、日本の食料安全保障が守られています。大橋 だいぶ難しい問題になってしまいましたね。小野 じゃあどうすればいいのよというところで、もう一歩進めようとやっているのが、まさに国立の取り組みなんですね。海外から来たお客さんにゲストハウス泊まってもらって、レタスを収穫してもらってですね、肉がないと寂しいんで燻製を自分たちでつくったり、ハーブを収穫して、こういった朝ご飯をつくったりするんですね。植物栽培工場はあまり役に立たない?大橋 水耕栽培ってあるじゃないですか。工場でレタスなど、食料を工場でつくろうという動きがありますが、どのようにお考えですか。小野 そうですね。砂漠もどんどん広がっているし、例えば、アイスランドみたいなところでも人が暮らしていることを考えると、特定の環境においては役に立つ技術だろうなと思います。 ただ、水耕栽培や植物栽培工場が、人類の食料生産を補完する技術になりうるというのは、実現する(小野)農業を始めれば、自分の心が少し癒えるかもという思いもあったんです
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