多摩美術大学|サーキュラー・オフィス 2023 年度 活動報告書
39/44

37「Satsuma Future Commons」を、「衣食住を切り口に、『多様な市民が協力しながら、新しいライフスタイルを生み出す』市民参加型のラボ」と解説するリ・パブリックの田村さん。の循環システムデザイン」です。 新型コロナ禍によって、私たちの衛生に対する認識や行動が可視化され、大きく変化しました。こうしたチェンジが起きている時期に、「人の暮らしや生活から、循環経済を改めて捉えなおしていく」ということが出発点でした。 当時はUberEatsなどの食品デリバリー系サービスが一気に広がり、食品の廃棄が問題視された時期でもあります。そこで、食品パッケージを取り巻くプロダクトとサービスのリ・コデザインを考えています。 プロジェクトは3つのフェーズに分かれています。フェーズ1はリサーチ。日本と台湾が行き来できない時期だったので、オンラインで実施しました。フェーズ2はデザイン。フィールドワークとプロトタイピングを行っています。フェーズ3はプロセスのドキュメンティング。こうした場を借りながら、成果発表をしております。 簡単に、各フェーズを説明したいと思います。フェーズ1では、日本と台湾の大都市と地方都市を軸にしたリサーチを行いました。LINE上にアプリを作り、参加者15人に日々の食品廃棄に関することを記録してもらいました。最終的には、我々がそれをマッピングして、全員で読み解くというプロセスを辿りました。 ここでは、参加者が「パッケージを捨てるときに沸き上がった感情」も収集しています。「外箱のフィルムがピリッと剥けると気持ちが良い」とか「油がものやサービスを介して変化を起こしていく」という従来のビジネスモデルだけでは、もう希望が持てないのかなと思います。 そこで僕たちはこの3年くらい「ビジネスエコロジーへの転換」を提唱し、「多様なステークホルダーが、特定のミッションを追求しながら場やシステムに参加することで、それぞれ得たいものを得ていく」という生態系を作りたいと考えています。 薩摩川内の取り組みで、これを実現したいと思います。その活動のひとつとして、2022年に「RE:STORE(レストア)」という町中のサーキュラー拠点をオープンしました。様々な活動を通して、ローカルから始まるサーキュラーなライフスタイルを考え、デザインしています。 例えば、薩摩川内は全国一の竹林面積を有しているのですが、竹林の約95%は放置されています。この放置竹林を管理型の竹林に変えていくために、竹を使用した「バンブフル」という取り組みを行っています。実際に竹林を手入れしながら、拾ってきた竹で小屋や家具などを制作し、「自分たちの手で、自分たちの暮らしを作る」ことを考えています。 現在、久見崎は「工場を建てる」という方針で開発が進んでいるため、それとはまた違った方向性で、自分たちの新しい衣食住の在り方を追求できる場を作っていきたいです。こうした活動が、最終的にSatsuma Future Commonsにもつながっていく。 私たちは、循環というものをどうやって自らのものにすることができるのでしょうか。それを考えながら、街としてのあり方を探っていくことが大切です。食品のパッケージと、サービスのリ・コデザイン神尾 今回のタイトルは、「科学だけでない、哲学としてのサステナビリティ」です。2019年に薩摩川内のプロジェクトが始まり、台湾が循環経済において一歩先を行っていることを知りました。2019年秋に台湾で開催された「Future is Now」というプログラムで、REnato Labのみなさんとお会いしました。 2021年にスタートしたのが「Repack」です。テーマは、「パンデミックによる衛生観念の変容から考える、食品パッケージやサービスにおける人間中心

元のページ  ../index.html#39

このブックを見る