多摩美術大学|サーキュラー・オフィス 2023 年度 活動報告書
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39アジア・パシフィック全域を念頭に循環型社会を目指す実践者たちに集まっていただき、個々の土着性に注目しつつも、一地域や文化圏の枠を超えて、それぞれのプロジェクトを通じて得た知見を共有してもらった。台湾の循環型経済コンサルティング企業であるREnato Lab、⽇本のシンク&ドゥタンクであるリ・パブリック。ゲストと共に、すでに展開してきたプロジェクトの意義を言語化しつつ、循環のこれからを各自が持っているテーマについて語り合った。パッケージの見直しから廃材のリサイクル、地域の文化再生まで、様々な視点で実践する循環型デザインを関連づけるもの。これらが未来をコ・リデザインする上で欠かせないものになるだろう。「2050年は、世界がカーボンニュートラルの実現を約束した年です。2050年、あなたは何歳になっていますか?」と問いかけるREnato Labのアイニンさん。で興味深い台湾の事例がありました。台北の万華で、若いオーナーが伝統的な市場の隣にある歴史的建造物の中にビストロをオープンしました。お客様はビストロから陶器の皿を借り、伝統市場で食べ物を購入します。市場の出店者は食べ物を直接皿に盛り、お客様はそれをビストロに持ち帰って飲食を楽しみます。これはプラスチック袋の使用を減らすだけでなく、ビストロと市場の間につながりを作り出し、エコシステムを形成しています。このようなエコシステムとコミュニティの新しい関係は、重要な相乗効果を生み出すことができます。 芸術を学ぶ学生のみなさんは、「アートや創造性はサステナブルな転換に何ができるのか?」と疑問に思うかもしれません。サステナブルな転換において、私たちは小さな存在であり、すべてを知っているふりをしたり、何でもできるふりをしたりする必要はありません。ヒーロー主義も役に立ちません。協力し合ってこそ、より大きな可能性を引き出すことができるのです。私たちのサステナブルな転換の旅が、楽しさと喜びに満ちたものになりますように。レクチャーのアーカイブ映像を、サーキュラー・オフィスのWebサイト(https://circularoffice.tamabi.ac.jp/)やYouTubeチャンネル「TUB Tama Art University(多摩美術大学 TUB)」で公開しています。ぜひご覧ください。くことを目指しています。 当社は3つの主要な事業分野に注力しています。第一は物理的製品の処理です。課題に直面しながらも、廃棄物のリサイクルと新素材・製品への転換を継続しています。第二は循環型経済の知識体系と方法論の確立で、主に製造業向けのサービスを提供しています。これはアジア経済が製造業に大きく依存しており、環境への影響が特に顕著だからです。第三は教育と普及活動で、循環型経済の影響力拡大に努めています。この点については後ほど詳しくお話しします。 顧客は主に、各地域の規制に従う必要のある多国籍企業です。例えば欧州連合は、CBAM、デジタル製品パスポートなどの新しい環境規制を次々と導入しています。これらの規制は最初にICT、バッテリー、建設、繊維などの産業に影響を与え、今後さらに拡大していく予定です。私たちの役割は、これらの企業が各地域の市場規制を遵守し、グローバル市場の基準に適応できるよう支援することです。 これらの取り組みは非常に重要です。なぜなら、カーボンニュートラル実現の55%はエネルギーに依存しており、これは残りの45%の排出削減努力が、いかに賢く資源を活用するかにかかっていることを意味します。これこそが循環型経済の核心です。 ここまで聞いて、「私に何ができるのか?」と考えるかもしれません。デザイナーを例にとると、これまでは主に製品の機能性や外観に注目してきましたが、循環型転換の時代では、ライフサイクル思考を採用する必要があります。これは循環型経済の枠組みの中で、製品設計から廃棄までのバリューチェーン全体を考慮することを意味します。これは過去とは大きく異なり、あらゆる産業が循環型転換に対応して変化する必要があります。 2023年、リ・パブリックとの協働プロジェクト「LIFE」を中心に見据えたクリエイティビティ──足達真帆(情報デザイン学科情報デザインコース4年)・中村寛

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