5オーダーしたり、それからバイデンとトランプのときにこの椅子が使われたりしました。そういう感覚を持つ日本のデザイナーが生み出すものが、ミニマリズムの造形表現として世界にもてはやされるわけです。 デザインを今一度、社会を良くするための表現である方策の提案として考え直さないといけません。だから我々は、少しでも良くなるだろうということで、日本文化に通底する循環的な考え方を取り込んだサーキュラーデザインというようなもので、もう1回に世界を考え直そう、自分たちも反省して、次の世代に良い社会を引き継いでもらおうと考えています。 少なくとも、多摩美に来た先生方、あるいは職員、学生、大学院生、あらゆる人にサーキュラーデザインという考え方があるんだということを意識してもらいたい。そういう考え方があると分かっていただきたいということで、このサーキュラー・オフィスを開設しようとしているわけです。中村 ミニマリズムの発想は、何百年と変わらない、思考の根幹にあるようなものに触れるというお話だったと思うんです。そこにアプローチしないといけないんだという発想について、もう少しお話いただければと思います。青柳 マキシマリズムっていうのが過去の生活様式、文化であるということをみんなで訴えかけていかないといけないと思うんですよね。もう一つは、ミニマリズムの中から生まれてきているようなものを生活空間の中に一つでも二つでも置いてもらって、それがスタンダードになって、周りのものもだんだんミニマリズムの考え方で生まれたものにしていくという。その二つの方向が必要なんじゃないかなという気がしますね。中村 見えにくいものを視覚化して見せる、見える化するのは、デザインが生きてくる領域なんじゃないかと思います。それはまさに、永井先生が取り組んできたことの一つなんじゃないかなと思いました。サーキュラー・オフィスを立ち上げる前から、大学内で様々な取り組みをされてきた永井先生のお話を聞いてみたいと思います。これからは、捨てることで支えていくデザイン永井 「すてるデザインプロジェクト」のポイントは、変化をもたらすことができるのが、デザインの持つ創造的な力だということです。美術大学は、これまで作ることで産業を支えてきましたが、これからは捨てることで支えていくデザインに変換していくという視点で2021年に立ち上げました。 青柳理事長の話も含めて、課題が大きいだけに、課題を前にして立ちすくんじゃう方も多いと思います。その時に、まず身の回りのことから一つ一つ進めていくのも大事じゃないかと思っています。「すてたモノをデザインする」や「すてる前提をデザインする」をこれまで実現してきました。今後は、「すてサステナブルな社会にしていくために、デザイン自体も発想を転換しなくちゃいけない(青柳)
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