寄生虫[きせいーちゅう]

津村 知枝

作者によるコメント

他人に依存しなければ生きてはいけない嫌われ者、厄介者の寄生虫。目を背けたくなるような彼らの姿とは反対に、その生態はおぞましくもユニークで、とても興味深いものでした。知れば知るほどに気持ちが悪い。そんな寄生虫たちの不気味な魅力を一冊の本にまとめました。小さな小さな虫たちの、静かでいて力強い生への執着は、とても美しい。

担当教員によるコメント

大きさも厚さも全てにおいてスケールを感じる一冊の本の佇まいと、個々のページに繰り広げられる117種類にも及ぶ寄生虫達のビジュアルは申し分ない。しかし、この作品で我々が一番注視しなくてはならないのは、テーマ設定という目に見えないデザインの力でではないだろうか‥。受注と発注の形式にとらわれ、条件でしばり、それに答える表現の優劣を競うデザイン実習の在り方では決して生み出されることのない作品だったと思う。
「寄生虫」という誰も見向きもしない存在を、津村知枝独自の視点、知と表現の両刀で素晴らしいエンターテイメントに昇華させた渾身の卒業制作は、グラフィック教育の在り方にも重要な問題を投げかけている。

教授・澤田 泰廣