ていねい

保澤 亜衣

作者によるコメント

速さや安さ、ある種の効率の良さは人々の物への価値観を貧弱なものにさせてしまうように感じます。物や文化、日々の生活を大切に、丁寧に扱う事が本当の豊かな生活を送る事なのではないでしょうか。そこでこの作品では、人々の物に対する価値観へ問いかける事を目指しました。そして答えとして、古本を再利用した素材を制作しました。丁寧に、丹精こらして織り込んだ新しい素材です。再利用である事、手作業で作られている事、そして物の価値の低下によって衰退しつつある物の象徴として古本を使う事で「丁寧に生きる。」ことを提案します。

担当教員によるコメント

太古から日本人は八百万の神を信じてきた。自然界に存在するものだけではなく、刀や器、鏡など人間が丹誠込めてていねいに作ったものも信仰や畏怖の対象となった。ものをていねいに使い続けるという日本人が本来持っている価値観は、現代にも受け継がれているはずだ。保澤はこの作品の原案となる「シュレッダーされた紙くずを編む」というアイデアを3年生の授業ですでに発表していたが、卒業制作にあたって「ものづくりとは、生きていくとは」ということから考え直した。その結果、編み機から自主制作し、ただの再利用目的で終わらない「ていねいに作ること=ていねいに生きること」を提案する作品になった。できあがった服が、神が羽織る衣に見えてしまうのは僕だけだろうか。

非常勤講師・水口 克夫

  • 作品名
    ていねい
  • 作家名
    保澤 亜衣
  • 作品情報
    技法・素材:立体作品/本、木材、紙、デジタル出力 他
    寸法:織り機/H110×W140mm×D15mm服/H365×W600mm 靴/H35×W40mmヘアコサージュ/H330×W240mm本/H235×W120mm写真/H53×W88mm(2点)
  • 学科・専攻・コース