あぶらえのかさぶた

西内 綾香

担当教員によるコメント

女子高校生が海岸で独りスイカ割りをしているイントロから映像的な魅力、映像でしかできない表現に惹き付けられる。玄関に父の靴と見知らぬ女性の靴が並んでいる、その間に自分の靴を脱ぐシーンはこの映画のテーマを最も端的に表して、しかも最も映画的に心の在り処を描いている。借り物ではない自前の映像美を求めながら、しかしこの映画は予め決められたラストに向かってはいない。作者と主人公はラストを探している。家出した父を追って東京に出て来ても、彼女は父を捜すのではなく出会いから新しい自分の世界を探す。主人公と母と東京で出会った愛人と、登場する女性たちは皆居場所が無く彷徨っている。詩に溢れた彷徨いの中でいつまでも自分の居場所を探し続ける映画だ。

教授・ほしの あきら