memory

武田 竜真

担当教員によるコメント

海の映像にライトアップされた奇妙な立像の影が映しこまれている。卒業制作の真っただ中、私はアトリエで石膏像の破片を目にした。よく見ると二種類の石膏像が混在している。マリア像と観音像だという。奇妙な立像、実は東西の宗教的シンボルの合体像なのである。そして映像は武田の育った天草の海である。武田の中に「日本人て何?」という問いかけがあったのだろう。極東の貯水池と言われる日本列島は東西の宗教を受け入れてきたが、一方で古くから自然崇拝の信仰を持つ。奇妙な合体像は天草の歴史的な象徴だが、シルエットでたたずむその影こそが私たちの本質だと言っているように見える。武田の、妥協を許さない表現にはいつも感心させられる。その真摯な姿勢が人の心を打つのである。

教授・室越 健美